MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-08-04 to 1 day

「黄金の魚」

ジャン=マリ=ギュスターヴ=ル=クレジオ著ノーベル賞フランス作家魚は強く逞しいモロッコで誘拐され人身売買され犯され蔑まれる黒人少女自由を求めヨーロッパに渡るも人種と文化の壁が聳える誰しも自分の居場所はなく動き続ける他ない荒波に揉まれ剥がれ…

「調書」

ジャン=マリ=ギュスターヴ=ル=クレジオ著ノーベル賞フランス作家実験的処女作眩い物質文明に囲まれながら仄暗い孤独心理が包む現代誰もが”調書”で自己を模索する脱走兵は時に鼠に時に獅子に変貌する太陽と海の薨ずる破滅へのコラージュカミュとサルトル…

「悪魔祓い」

ジャン=マリ=ギュスターヴ=ル=クレジオ著ノーベル賞フランス作家パナマ先住民中心の文明論“現代文明の美に厭世した”現代文明を批判の作品が多い著者行き着いたのはインディオ世界言語は記号ではなく唄刺青はお洒落ではなく呪術哲学的深淵を以て現代が忘…

「後悔するイヌ 嘘をつくニワトリ」

動物には勿論だが虫や植物にも感情がある犬は鋭い嗅覚と聴覚で存分に遊ぶが後悔することもある鶏は餌独占のため嘘をつく仔鹿や燕などは一人前になるまで子供を”教育”する教育が如何に重要かは動物と理解している教育投資を渋る現日本政府は畜生以下なのでは?

「蓮の道」

マーティン=ウィクラマシンハ著スリランカ作家梵我一如諸行無常愛別離苦無私無欲なヨガ医師の父伝統を押し付ける母贅沢と毛繕いに耽る姉そして優秀ながら無欲な私挫折ではないだが無欲は傍目にそう映る菩提樹に生まれ蓮を踏み沙羅双樹に散る現代の葛藤を生…

「悪魔の詩 下」

サルマン=ラシュディ著ブッカー賞最終候補ハイジャックテロで飛行機からダイブし奇跡的に助かる俳優とボンボンだが天使と悪魔に転生し袂を分かち数奇な人生を歩む現代ロンドンやムハンマド時代など時空間を飛び回る魔術的リアリズムクルアーン風刺の他イエ…

「悪魔の詩 上」

サルマン=ラシュディ著インド作家ムハンマドの一生を現代に寓話化彼の妻が娼婦という設定などムスリムが怒るのも当然(著者はイスラムを棄教)イラン革命指導者ホメイニが著者と訳者に3億の懸賞金と死刑宣告を発令邦訳者の筑波大教授を含め実際に世界中の翻訳…

「廃墟に咲く花」

パトリック=モディアノ著ノーベル賞フランス作家パリという都市と自身の記憶が絡む半自伝パリを歩けば何年も前に謎の死を遂げた近所の新婚夫妻を思い出す番地も通りも建物も記憶に生きている事件と現在が交錯し薄暗い路地裏とパリを立体化廃墟には見覚えの…

「推し 燃ゆ」

宇佐美りん著芥川賞受賞作“推しが燃えた ファンを殴ったらしい”こんな主人公は嫌だ全く共感できないだからこそ面白かった“推し活”命の少女が推し炎上と引退で生き甲斐を失い高校中退に加え家庭崩壊を招く世代問わず今時のSNS社会やオタク文化の持つ脆さと孤…

「ガラスの国境」

カルロス=フエンテス著メキシコ作家“哀れメキシコ!哀れアメリカ合衆国!これほど神から離れこれほど隣り合っているとは!”トランプ政権以前から燻る米墨の”ガラスの国境”国境の営みに関わる人々の9連作短編グリンゴ(アメリカ人の蔑称)への嫉妬憤慨憧憬協調…

「ただ影だけ」

セルヒオ=ラミレス著ニカラグア作家・元副大統領英雄から独裁者へソモサ大統領一族vsサンディニスタ民族解放戦線記事・裁判・調書・文書・尋問・手紙・供述に架空現実と過去現在の混同するニカラグア内戦記大統領私設秘書官アリリオ視点で展開独裁には”ただ…