MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-07-07 to 1 day

「複製された男」

ジョゼ=サラマーゴ著ノーベル賞ポルトガル作家映画に瓜2つの俳優を見付け”複製”と認識した教師俳優の住所を突き止め接触を試みるが同時に孤立と自己認識の迷路に迷う難解かつ実験的な長文体とドッペルゲンガー感覚を味わえるミステリクローン技術が実現した…

「詐欺師フェーリクス=クルルの告白 下」

トーマス=マン著 ノーベル賞ドイツ作家セレブ作家の手解きで古生物学者と邂逅しリスボンへ向かうクルルそこで一目惚れした教授の娘に近づいていく世界を股にかける詐欺師ながら憎めない行動と皮肉たっぷりの告白録古生物学や東洋哲学とマンの博識さと叙述性…

「詐欺師フェーリクス=クルルの告白 上」

トーマス=マン著ノーベル賞ドイツ作家詐欺師とも悪童ともいえる少年の”有りそうで無いピカレスク小説”ルーマニアを出て容姿と弁舌と愛嬌を武器にドイツの徴兵制を潜り抜けパリの高級エレベーターボーイにそこで美人作家と猟奇的な愛に臨み新天地を迎える

「キャッツアイ」

マーガレット=アトウッド著カナダ作家大器晩成したフェミニスト画家の生涯を作内の彼女の絵と題名で彩る幼少の虐め青春の恋愛熟年の育児老境の見栄人生という長い絵巻を1枚の作品に閉じ込め半生に黄昏れる記憶の中で宝物だった猫目模様のビー玉”キャッツア…

「わたしはティチューバ」

マリーズ=コンデ著フランス領グァドループ作家1692年 セイラム魔女裁判バルバドスで黒人奴隷として輸出後ボストン魔女裁判で弾劾された事件がモデル魔女狩り・拷問・強姦死者と対話し呪術で抗うも凄惨な運命に弄されるティチューバ“奴隷貿易”の暴虐性を女性…

「朗読者」

ベルンハルト=シュリンク著ドイツ作家15歳の少年転職を続け彼を誘惑する36歳の艶女熱を上げる少年を他所に奇妙な行動の果て失踪した女時を経て法学徒として思わぬ形で再会し隠し通した”黒歴史”が明かされていくその恋は少年を生涯”朗読者”にしたその恋は彼…

「宰相の像の物語」

イヴォ=アンドリッチ著ノーベル賞ボスニア(旧ユーゴ)作家“7国境6国5民族4言語3宗教2文字1国家”モザイク国家の日常に潜む憎悪と対立オスマン帝国の腑を貪った列強のバルカン問題残酷な運命と権力を訴える短編4集“宰相の像の物語”“絨毯”“シナンの僧院に死す”“…

新年初日の本棚

「愛その他の悪霊について」

ガブリエル=ガルシア=マルケス著ノーベル賞コロンビア作家狂犬病を患い悪霊に憑かれ髪が伸び続ける少女恐れられ疎まれ愛と憑依に苦悶し生の意味を知る実話ベースの魔術的リアリズム女が男を籠絡する通常のファムファタル小説を”滑稽な喜劇”でなく”孤独な悲…

「雪国」

川端康成著日本ノーベル賞作家“トンネルを抜けるとそこは雪国だった”真っ白な小説だった自然を謳う詩的な美文麗文上品な比喩と省略白銀の雪国が鮮明に浮かぶ喧騒な都会から静謐な雪国に越して来た男小さな世界で挫折する雪国の芸妓の女不倫と逢瀬と純愛逆説…

「世界終末戦争」

マリオ=バルガス=リョサ著ノーベル賞ペルー作家2段組700Pの超大作19世紀ブラジルの”カヌードスの叛乱”描かれる”1つの世界の終末と戦争”善と悪文明と未開戦争と平和宗教と理性暴力と愛“ブラジル共和国vsキリストの再来”貧困な弱者たちは腐敗政権の強者に崇…

「はた迷惑な人々」

ジェームズ=サーバー著アメリカ作家・漫画家当事者からすれば迷惑な人も部外者から見れば愉快な”傍迷惑な人々”だったりするお釣りの計算が出来ず逆ギレするオバサンシェイクスピアを探偵小説と思い込む人ダム決壊のデマにあたふたする町民ユーモラスでシニ…