MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-07-03 to 1 day

「ティファニーで朝食を」

トルーマン=カポーティ著アメリカ作家表題作+3短編地味な青年作家×パパ活ゴシップ美女戦後のN.Y天衣無縫な魅力で世間を騒がせる彼女に惹かれる青年だが少しおいたが過ぎた様だそんな所まで愛おしくなる作品村上春樹のあとがきが秀逸CoCo壱で夜食を食べなが…

「八月の光」

ウィリアム=フォークナー著ノーベル賞アメリカ作家魔術的リアリズムの始祖当時は画期的な複数主人公や時空間乱立手法奴隷制の因習が残る南部白人か黒人かの自我に苦しみ殺人を犯す成金混血身籠った子の父を探し彷徨う女書物と幻想に現実逃避する牧師“本とい…

「クララとお日さま」

カズオ=イシグロ著ノーベル賞イギリス作家人間になりきるAI機械になりきる人間病弱な少女の補助のため複雑な家庭に派遣されたAI”クララ”繊細な奉仕で信頼を得ていくAI明かされるAI導入の真の目的人の持つ機械の様な温情と冷酷お日さまはその暖流と寒流を循…

「蛙鳴」

莫言著中国ノーベル賞作家蛙•の•歌•が•聞•こ•え•て•く•る•よ鬨を告ぐ赤子の産声”蛙鳴”“死んで産むか?産んで死ぬか?”第2子殺しの産婦人科女医賄賂で逃げる富裕層無戸籍子女”黒孩子”貧民の嬰児殺し優性遺伝の代理出産第1子尊重で男女平等促進1人っ子政策の功…

「生命の樹」

マリーズ=コンデ著フランス領グアドループ作家3大陸4世代一家のサーガパナマ運河開鑿→カリフォルニア成金→パリ留学→再びカリブ黒い積荷(黒人奴隷)白い積荷(砂糖)大国に蹂躙されるカリブの臨場感ある筆致と大西洋三角貿易の黒歴史との化学反応これぞ”グロー…

「無意味の祝祭」

ミラン=クンデラ著チェコ作家“無意味は人生の本質だ”確かに人は究極言えば衣食住があれば生きていける無意味を楽しまねば人生はなんと虚無なものか!スターリンや性などのジョークを交え言葉遊びと冷静な皮肉が光る生き方に悩む方へ悩むだけ無駄なので楽し…

オルハン=パムク全10作品読破記念総書評

“永遠の都”ローマと云う“第2のローマ”もまた永遠だろう現在のイスタンブールは”美しき廃墟”失われたオスマン帝国の栄華歩み寄れぬヨーロッパへの道狭間で葛藤するトルコ共和国を王道の純文学で美しく言語化文明の混淆に想い寄せ語る唯一無二のトルコ作家

「黒い本」

オルハン=パムク著ノーベル賞トルコ作家都市描写模写性寓意的揶揄“読む”というより”感じる”作品政論を投稿しながら失踪した妻と従兄弟を探すコラムニストオスマン帝国から現代までと円環するイスタンブール迷い込むは”黒い本”2つの物語が交錯し夢と現が融解…

チママンダ=ンゴズィ=アディーチェ全6作品読破記念総書評

最早アフリカやナイジェリア作家に留まらない世界的普遍性を持つ作家”才能が泉の様に湧き出る”という表現がピッタリ短編から長編まで多様な人種・性差・階級・文化を奥行き深く描く普遍的共感の余韻が滲む彼女自身も快活で魅力的な女性

「明日は遠すぎて」

チママンダ=ンゴズィ=アディーチェ著ナイジェリア作家短編9集短編ながら奥行きがある生命力に溢れた華美な文章ナイジェリアの村社会が日本のタテ社会を想起させ沁みる様に共感した“明日は遠すぎて”すぐ来るはずなのに遠く感じる未来一瞬一瞬を必死で生きる…

「悲しみよ こんにちは」

フランソワーズ=サガン著フランス作家葛藤や嫉妬と酸いも甘いも知り尽くした18歳のものとは思えない作品“Bonjour Tristesse”プレイボーイの父その恋人の女父の娘娘の恋人三角四角に結び合う恋人たちプロヴァンスでのバカンスが揺れ動く複雑な少女の青春を繊…

「犯罪」

フェルディナント=フォン=シーラッハ著ドイツ作家700の事件を答弁した弁護士にしてナチ党全国青少年指導者シーラッハの孫犯罪にまつわる強烈な11短編集殺人は悪か?当然だ救済の殺人も贖罪の虚偽も赦されうるのか?凄惨な犯罪は歪んだ社会に現れる人と犯罪…

「酒国」

莫言著中国ノーベル賞作家“酒は飲んでも飲まれるな”食人都市”酒国”偵察に来た検事を迎える酒と美女と人肉百鬼夜行に未知満ちて酒池肉林に芸妓やし舌鼓にや小噺いかが?•本編•小説家志望の酒造研究者の短編•莫言と研究者の往復書簡3語手が交錯し短編が本編を…

「初夜」

イアン=マキューアン著イギリス作家挙式当日わずか8時間の小説世界“初夜”幸せの絶頂の日のはずが大好きな相手のはずが子供も欲しいはずが身体が拒否する“恋愛”というが”恋”と”愛”は真逆の概念だと再確認本編と真逆ですが夫婦で睦まじく素敵な家庭を築くって…