MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

「十六夜橋」

石牟礼道子
故郷”伝統家屋と廓の街”熊本
対岸にある”異国の窓口”長崎
死者の淡い想い出を方言や土着の文物を用いた優しい走馬灯はマジックリアリズム風でもある
詩的で美しい自然描写が魅力で特に植物名と伝統工芸品に詳しい
死者の幻想
生者の夢想
三途を隔て彼岸と此岸を繋ぐ十六夜

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「臨海楼奇譚(新アラビア夜話2部)」

ロバート=ルイス=スティーブンソン著
イギリス作家
4短編集
同著者「新アラビア夜話」続編
千一夜物語」の舞台をロンドンの街と住人に置き換えた作品
“南海楼奇譚”
“その夜の宿”
“マレトロワの殿の扉”
“天意とギター”
情動的作風で静物的なボルヘス等とは好対照

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「肉の家」

#一日一編
6作目
ユースフ=イドリース著
エジプト作家
現代イスラム社会の禁忌”性欲”を小説で初めて真向から捉えた反体制派の先鋒
恋愛婚でなく見合婚で盲の婿を用意される娘
ぎこちない生活と西洋的社会が忘れた道徳的退廃
一夫多妻制など伝統社会に置き去りの伝統社会の閉塞感を比較する

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「イザベルにーある曼荼羅」

アントニオ=タブッキ著
イタリア作家
サラザール独裁下ポルトガル獄中で死んだというイザベル
だが彼女の遺体は見つからなかった
男は数少ない消息情報を元に世界各国を放浪し9人の多職な証言者に出会う
スイス
イタリア
香港
インド
曼荼羅を彷徨う果ての結末や如何に?

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「色・戒」

#一日一編
5作目
張愛玲著
アメリカ亡命香港作家
映画化原作
長編「傾城の恋」で有名
日露戦争全権大使の李鴻章の曾孫
上海と香港の租界に蠢く日中戦争期スパイ
恋・陰謀・腐敗・革命・サバイバル…
日本人や印僑も登場する国際都市の静かな”もう1つの戦争”を描く
短編だが長編の様に奥深い

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「アルジャーノンに花束を」

ダニエル=キイス著
アメリカ作家
“ぼくあたまわりいからしじつで天才になる”
32歳
無知から全能へ
天才となり初めて知る愛と孤独

愛を込めて花束を
大袈裟だけど受け取って
理由なんて聞かないでね
今だけ全て忘れて
笑わないで受け止めて
本当の私を
いつまでも側にいて

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〜BAY FM幕張〜

お送りしたのは三重県在住ラジオネーム酒さんのリクエスト曲
Superflyで「愛を込めて花束を」

小説「アルジャーノンに花束を」を想起する歌詞
学生時代サマソニの会場で何気なく赴いたステージでその生歌に隣の知らない人と手を取り感動

以後カラオケでもよく歌うお気に入り曲だそう

「タルパ」

#一日一編
4作目
ファン=ルルフォ著
メキシコ作家
「ペドロ・パラモ」著者の描く猥雑な母国
皮膚が膿んで爛れた家族を神の”宗教的奇跡”に縋り必死で恢復を祈る
呪術的な髑髏や死者の祭で有名な国メキシコ
その描写がリアルで著者が経験してきた大衆の生活と同じだったのだろうと想像できる

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