MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

「イブン・バットゥータの世界大旅行」

実は黒海沿岸もベトナムも中国も行ってない? マリーン朝ロッコ稀代の旅人 「諸都市の新奇さと旅の驚異に関する観察者たちへの贈り物」 別名「大旅行記」完訳者の研究書 メッカ巡礼とアラブ放浪 インドとモルディブ法官時代 晩年のアンダルシア聖戦とマリ王国

「アルハンブラ物語」

ワシントン=アーヴィング著 アメリカ作家・大使・随筆家 アンダルシアの歴史と遺跡に魅せられアルハンブラ宮殿に滞在した美文作家のイスラムの香り漂う旅行記・伝説集 ウマイヤ朝 グラナダ王国 ナスル朝 サルマン・ラシュディムーア人の最後のため息」のボアブディル王も登場

「ドン・キホーテの旅」

セルバンテスの名著「ドン・キホーテ」 決闘→指名手配→レパントの海戦で隻腕→アルジェで捕虜→娘の結婚詐欺始末→59歳で刊行 元祖”信頼できない語り手” 諧謔と風刺と滑稽 最後の騎士道文学 最初の近代文学 愛馬ロシナンテ サンチョとの奇妙な2人組 人文主義 旅人 国語形成

「ひとり日和」

青山七恵著 1長編1短編 芥川賞受賞作 “ひとりではあっても孤独ではない” 20歳の平凡なフリーター女性は中国に転勤する48歳の母から遠戚の71歳の元気なおばあちゃんの元に居候を勧められる 各々が恋を経験し”ひとり”とは何か考える 題名で分かる通り文体も音楽的 バランス良い優等生作品

「ワシプンゴ」

ホルヘ=イカサ著 エクアドル作家・医者 先住民文化復興を主張したインディヘニスモ文学の金字塔 医業の傍らで憤り社会告発した作品 ケチュア語で”出入口”を意味する言葉 エクアドルでは先住民の奴隷労働分与地も意味に含む 油田発見で動員された先住民が更に地主に搾取される様を描く

「赤頭巾ちゃん気を付けて」

庄司薫芥川賞受賞作 半自伝 都立日比谷高校男子生徒の庄司薫 東大紛争で受験中止となり社会と自身を改めて見つめ直すことに… いざ勉強を取り上げられれば乳房も女生徒も社会も経済も古代史も純文学も左翼も電話も未来も童話も気になるお年頃 立ち止まった青春のひと時

「佐川君からの手紙」

唐十郎芥川賞受賞作 書簡体小説 パリ人肉食事件で話題を呼んだノンフィクション作品 オランダ女性殺害の日本人である犯人”佐川君”から手紙を受け取り渡仏して真相を追った著者 パリの裏路地を歩き幻想的な風景と記憶を操る文章はフランスのノーベル賞作家モディアノを想起する