MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2024-03-13 to 1 day

「ヤンとピート」

一日一編 世界イディッシュ短篇選 ラフミール(リチャード)=フェルドマン著 南アフリカ亡命ユダヤ系リトアニア作家・政治家 アパルトヘイト期の南アにユダヤ史を重ねる 白人警官のヤン 黒人運動推進者のピート 同じ母の下で育った幼馴染 支配者と被支配者の…

「泥人形メフル」

一日一編 世界イディッシュ短篇選 ロゼ=パラトニク著 ブラジル亡命ユダヤ系ポーランド作家 ブラジルに亡命したゴレム(ユダヤ伝説泥人形)という渾名の男 リオは多人種社会だがユダヤだけは金に汚いとして迫害され続ける やがて金持ちとなり迫害した者が玉の…

「マルドナードの岸辺」

一日一編 世界イディッシュ短篇選 ナフメン=ミジェリツキ著 アルゼンチン亡命ユダヤ系ウクライナ作家・医師・ジャーナリスト 強迫観念が強いドストエフスキー的な作品 亡命先のブエノスアイレスでも迫害を受ける少年 創世記以来ディアスポラしたユダヤ史と…

「兄と弟」

一日一編 世界イディッシュ短篇選 イツホク(ジャック)=ブルシュテイン=フィネール著 フランス亡命ユダヤ系ポーランド人 ホロコーストを生き延びレジスタンスとして活躍 ゲシュタポから逃げる兄弟 幸せだった日々を思い出しながら戦下の街を這う 希望の地フ…

「満たされぬ道 下」

ベン=オクリ著 ナイジェリア作家 精霊界に連れ戻され5回も輪廻転生する主人公! 憑霊され政治家にボクサーに大忙しな父! スキャンダルに暴動に事件続きの写真家! “未知の王”の“道の王”!? 満たされぬ物語は西洋に抗ったナイジェリア近現代史の鏡でもある……

「満たされぬ道 上」

ベン=オクリ著 ナイジェリア作家 ブッカー賞受賞作 「精霊たちの家」+「やし酒飲み」+「「ライ麦畑でつかまえて」!? 精霊界と人間界を往来可能な精霊は人間界で生きることを決意する… 憑依?幽体?変人(霊)?霊(変)態? 魑魅魍魎の跋扈するナイジェリア版…

「最後の注文」

グレアム=スウィフト著 イギリス作家 ブッカー賞受賞作 “亡き友の遺灰に盃を” 何十年を共にした友の死を悼む4人の仲間 確執もあった 喧嘩もあった 失望もあった 戦争もあった 遺言は遺灰を思い出の海に捨てること 読者も徐々に各人の記憶が明かされる文学の…

「パディ・クラーク ハハハ」

ロディ=ドイル著 アイルランド作家 ブッカー賞受賞作 6人家族長男パディ 学校ではサッカー好きの”ウンコを連発する”悪戯っ子集団の仲間のお調子者 家族では兄弟達の世話係にして親の顔を伺う慎重者 恋に勉強に家事に遊び 最後の子供時代を鋭い感性でコミカ…

「喪失の響き」

キラン=デサイ著 インド系イギリス作家 ブッカー賞受賞作 事故死したソ連宇宙飛行士の両親を持つ孤児のインド人少女 彼女の家のコックの息子で恋人にしてNYで永住VISA取得を夢見る不労就労のネパール人少年 2人の恋の障害となるネパール独立運動 米ソ冷戦期…

「カフェテリア」

一日一編 世界イディッシュ短篇選 アイザック(イツホク)=バシェヴィス=シンガー(ジンゲル)著 ノーベル賞ユダヤ系アメリカ亡命ポーランド作家 NYカフェテリアで寛ぐ著者と思しき男 突如として作品のファンという女性に口説かれる 彼女はNYでヒトラーと一夜…

「後継者たち」

ウィリアム=ゴールディング著 ノーベル賞イギリス作家 原初人類史を寓話化し人間本能に潜む性悪説的原罪を炙り出す野心作 <野蛮>ネアンデルタール人(旧人類) vs <文明>ホモサピエンス(後継者) 当時の生活と道具を驚異的想像力で補った最先端の文化人類学研…

「ブルターニュの歌」

ジャン=マリ=ギュスターヴ=ル=クレジオ著 ノーベル賞フランス作家 2中編 “ブルターニュの歌” 休暇中に過ごした発祥地にてモーリシャス移住前のブルトン人先祖と在りし日の原風景を辿る言葉の旅 “子供と戦争” 第二次世界大戦下ニース3〜5歳の記憶を80歳を…

「シーダとクジーバ」

一日一編 世界イディッシュ短篇選 アイザック(イツホク)=バシェヴィス=シンガー(ジンゲル)著 ノーベル賞ユダヤ系アメリカ亡命ポーランド作家 地底生活中の悪魔の母子 地上から襲い来る”神の失敗作”人間の光から日々の闇の安寧を守るため祈る 地上に追われ…