MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-08-01 to 1 day

「ゼロK」

ドン=デリーロ著アメリカ作家不治の病を抱えた妻を凍結保存で未来の科学での解決に託す大富豪中央アジアの僻地に呼ばれた2人の息子が”見たもの”或いは”見る事になるもの”…“氷漬けの記憶と愛”は灯を取り戻せるのか?近未来的科学を題材を扱いながら人間的倫…

「ポーランドの人」

ジョン=マクスウェル=クッツェー著ノーベル賞南アフリカ作家70歳ショパン弾きの世界的ピアニストダンテが愛した女性と同じ名前の50代既婚者ベアトリスに惚れて駆け落ちを提案舞台はショパンが晩年を過ごしたマヨルカ島へセレナーデからノクターンに変奏す…

「飢えた潮」

アミタヴ=ゴーシュ著インド作家ベンガル湾ガンジス川デルタは豊かな生態系と貧しい人々の共生する世界最大のマングローブ地帯潮が導き入れる虎・蟹・鰐・カワイルカ等の土着文化神話・地質学・歴史・宗教・政治・動物行動学・気象・災害・言語学…“潮の国”を…

「見ること」

ジョゼ=サラマーゴ著ノーベル賞ポルトガル作家「白の闇」後日談視界が白い盲目に包まれるパンデミックから4年後…総裁選の大量白票で緊急事態宣言を出す政府更に首都封鎖警察・市民・政府・官僚・首相・保険会社の各々が予測不能な行動へ自治と権力の本質を…

大江健三郎全74冊読破記念総書評

戦後史=大江文学史22歳で文壇の寵児へ常に時代を弱者の側から描き文体改造を継続またノーベル賞後にこれほど挑戦的な大作を出した作家もいない作家としては勿論批評家として人として父として本当に立派な方義の想像と偽の創造が育む渓流の樹海神話のサーガ群…

「大江健三郎全小説全解説」

全小説刊行時の15テーマに沿って60年に及ぶ全作品世界を短編に至るまで解説代表作から隠れた名作まで時代背景と作家の心境に著者自身のインタビューや批評家の引用まで含めたダイジェスト乍らも充実した分析大江文学における圧倒的かつ先駆的な作品群の魅力…

「厳粛な綱渡り」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家エッセイ集文化・芸術・絵画・音楽・政治・時評・創作論・回顧録…更には自作批評の自己解釈まで多分野に渡る20代の総括的エッセイ集常に”綱渡り”する様な緊張感を持って仕事をしてきた作家の思索と膨大な知識が伺える特に政治…

「オペラをつくる」

大江健三郎(日本ノーベル賞作家)&武満徹(作曲家・音楽家)共著ロマン主義→自然主義→印象派…音楽も文学も絵画も”芸術”は同時進行してきた特に言葉と音楽の”総合芸術”オペラはその叡智が凝縮されるもし両界の巨匠2人が“オペラをつくる”話をしたら…?やはりクラ…

「日本の”私”からの手紙」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家エッセイ集ノーベル賞受賞の思索と振り返り世界と日本の思想の違いの中で真理探究に耽る天皇が人間の声で話した日の回顧仏シラク大統領の核実験批判国連大学公演ギュンター・グラスとの往復書簡家族との思い出スピノザ研究へ…

「いかに木を殺すか」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家8短編集「同時代ゲーム」を補完するサーガ作品群“揚げソーセージの食べ方”“グルート島のレントゲン画法”“見せるだけの拷問”“メヒコの大抜け穴”“もうひとり和泉式部が生れた日”“その山羊を野に”“罪のゆるしのあお草”“いかに木…