MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-03-09 to 1 day

「エバ・ペロンの帰還」

ヴィディアダハル=スラヤプラサド=ナイポール著ノーベル賞トリニダード=トバゴ作家4紀行文集“マイケルXとブラックパワー”トリニダードの黒人解放運動“エバ・ペロンの帰還”ボルヘス風ルポ短編“コンゴの<新国王>”モブツ独裁政権の暴走“コンラッドの闇”逆「…

「羊男のクリスマス」

村上春樹著「羊をめぐる冒険」登場の羊男が主人公の異世界冒険絵本クリスマスソング作曲の依頼を受けたドーナツ好きの羊男何故かクリスマスにピアノが上手く弾けなくなる呪いを解く為に羊博士の力を借りて鍵となる聖羊上人を探す穴・異世界・境界と他作同様…

「ミダック横町」

ナギーブ=マフフーズ著ノーベル賞エジプト作家35連作短編集アザーンが響きアッラーの思し召しを告ぐカイロ片隅のスラム街”ミダック横町”曲者集まる地元カフェ美女と美容師の恋金持ちと放浪者の問答寡婦・詩人・政治家・物乞い・女衒…かつて繁栄した下町のコ…

「他人の家」

ソン=ウォンピョン著韓国作家8短編集“四月の雪”妊活と観光と国際交流“怪物たち”親殺し子憎し“zip”保育士の苦悩“アリアドネの庭園”少子高齢化SF“他人の家”ルームシェアの功罪“箱の中の男”自己犠牲と不条理“文学とは何か”文体練習覚書“開いてない本屋”本なき…

「サミュエル・ジョンソンが怒っている」

リディア=デイヴィス著アメリカ作家56短編集1行の小説や多くても20Pの短編がメイン独特な余白と欧米言語では珍しい主語の欠如や省略更に知覚的な文体と沈黙の多用何作かで連続短編で主人公を務めるキュリー夫人の話が好きなおポール・オースターの元妻

「そっと静かに」

ハン=ガン著韓国作家・詩人詩・エッセイ集散文的小説は完成度が低いとポエムと遇られてしまう為とても難しい川上未映子もそうだが日常的にエッセイをものす作家は詩を書くととても様になる音楽や歌の思い出から初恋まで反復と擬人法と体言止めが多く詩人の…

「女たちの沈黙」

パット=バーカー著イギリス作家“戦争は女の顔をしていない”ホメロス「オデュッセイア」トロイア戦争をリライト西洋文学は男2人の1女性争奪戦に始まる性奴隷・産む機械・婢女・巫女・看護師…戦争捕虜少女は口を噤む男に反抗できないゆえ会話文が殆どなく心境…

「影の王」

マアザ=メンギステ著エチオピア作家国際ブッカー賞最終候補ムッソリーニ指揮下イタリア軍によるエチオピア侵攻皇帝ハイレ・セラシエ亡命瓜二つの若者が影武者となり戦士を鼓舞するそれを支えた名もなき兵士と女性兵や看護者など”影の主役”と”裏の英雄”を丁…

「妣たちの国」

石牟礼道子著詩とエッセイと少しの短編「苦海浄土」で国家に宣戦布告した著者その裏には愛すべき故郷で水俣病に苦しむ人々と何より母がいた海洋汚染と後継者不足に悩む漁師西郷隆盛の戦いを見届けた祖母「百年の孤独」の様に熊本弁で語られる口承の歴史語り…

「ヴィクトリア」

クヌート=ハムスン著ノーベル賞ノルウェー作家詩作に耽る粉屋の少年ヨハンネス未来の城主たる令嬢ヴィクトリア幼くして惹かれ合う2人はしかし身分の違いで袂を分つ…やがて新鋭詩人は凱旋し2人は再会するだろうそれが愛の始まりだとは知らずにそれが恋の終わ…

「マカエンセ文学への誘い」

4人のポルトガル系マカオ人からなるアンソロジー特に150Pの中編“魅惑的な三つ編みの娘”が素晴らしい中国の中でも福建などは客家が多い香港や上海ですら100年弱だがマカオは500年ポルトガルに支配された独特な伝統と文化が息づいた一方で近代化の喪失を嘆き謳…

「遠くにありて ウルは遅れるだろう」

ペ=スア著韓国作家“はじまり”を想起する女”ウル”(古代オリエント都市名)場所も時間も主題も設定も曖昧な独特な作品記憶喪失(前向性健忘症?)した女性の幻想的な自分探しを3視点で描写3章とも殆ど同じ展開だが視点を少しズラし咬合させ共鳴と差異を炙り出す

「王道」

アンドレ=マルロー著フランス作家・文化大臣・冒険家・義勇兵バンテアイスレイ像の発掘と祖国献上を試みた著者の半自伝アンコール遺跡の大通り”王道”ジブチ港で出会う白人コンビはカンボジアを目指す密林・発掘・疫病・族長・先住民…白人視点の当時のアジア…

「満ち足りた人生」

キム=チュイ著ベトナム系カナダ作家・詩人半自伝幼少期ベトナム戦争でボートピープルとしてカナダへ渡った著者同情も多いが人に恵まれレストランも営めて学位も夫も家族も得た”満ち足りた人生”と語る細切れな各章題と文体が詩的ベトナム料理&文化が大量に散…

「もうすぐ20歳」

アラン=マバンク著コンゴ民主共和国作家ソ連寄り+アフリカ視点の「ライ麦畑でつかまえて」反米ゆえ潰されるイランやアフリカ諸国に無力ながらも憤る父子少年期〜20歳になるまでの心境を許嫁・家族・友人と確かめ合い大人になっていく有りそうで無い設定と精…

「マーメイド・オブ・ブラックコンチ」

モニーク=ロフェイ著トリニダード=トバゴ作家500年前に呪われて人魚になった美女先住民恋に落ちた男性は彼女を匿うが人間に戻り始め同時に災厄が島を襲う「老人と海」級の人間vs人魚の釣りシーン等の細部や奴隷制の闇を問う点がリアルなマジックリアリズム

「四書」

閻連科著中国作家国際ブッカー賞最終候補「新シーシュポスの神話」「天の子」「罪人録」「旧河道」4書物の記録千里眼の”こども”が農作業使役で知識人更生を行う特別区解放のため告発も棄教も強いられる専門家搾取と強制労働や焚書の末に大飢饉へ「蝿の王」×…

「資本主義と奴隷制」

エリック=ウィリアムズ著トリニダード=トバゴ初代大統領・歴史学者世界史上最大の負の遺産”奴隷貿易”近代世界システム論から資本主義的搾取実態を分析し喝破した画期的&先駆的な研究欧米列強の植民地化と現地伝統経済崩壊の過程を奴隷制の盛衰と共に中南米…