MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-05-26 to 1 day

「浮世の画家」

カズオ=イシグロ著 ノーベル賞イギリス作家 戦中は”国威発揚の画家” 戦後は”戦争扇動の画家” 著者は中立的 子の縁談が名誉が離れていく 苦悶し自分を見失う”浮世の画家” それでも人は生きていく 自分を貫く大切さを訴えてくる 無駄な会話と回想が多いが明確…

「女の一生」

ギー=ド=モーパッサン著 フランス作家 夫/父/母/侍女/息子/神父/宗教/金と全てに裏切られるピュア娘の一生を描く 故郷ノルマンディーや当時の物価事情に詳しく当時の女性観が分かる 映画の様に描写が浮かぶザ写実主義の1冊 短編の名手だが長編もテンポ良い…

「遠い山なみの光」

カズオ=イシグロ著 ノーベル賞イギリス作家 処女作 中立的で淡白ながら構成が堅固 現実への回想の入れ方が上手い ー終戦ー “鬼畜米英”が”民主化の母”になった日 戦後日本人の世界は180°変わった 前時代vs新時代の文化摩擦 戦争では脇役だった女性が主要キャ…

「現代アジア論の名著」

海鼠で分かる東アジア貿易? 現代アジア論17名著 “中国近世の宗教倫理と商人精神” “三民主義” “チベット旅行記” “チョゴリと鎧” “帝国主義下の台湾” “19世紀バリの劇場国家” “創造の共同体” “ナマコの眼” “ヒンドゥー=スワラージ” “東西文化交流の諸相” “イ…

「黄色い雨」

フリオ=リャマサーレス著 スペイン作家 “奇跡的な美しさ”と評された詩人 小説より叙情詩に近く幻想文学的描写は南米文学からの逆輸入にも感じる 廃村に1人残された男と犬がポプラの落葉“黄色い雨”に埋れゆく 忘れられた廃村の忘れられない記憶 “人はいつ死…

「宝石/遺産」

ギー=ド=モーパッサン著 フランス作家 シニコミカルとも言うべく絶妙な皮肉が味の短編集 表現の簡潔さとオチの1文に唸る “宝石”妻の宝の持ち腐れ “遺産”遺産相続を巡る滑稽劇 “車中にて”貴族ほどチャラい “難破船”難破船でナンパ “パラン氏”妻と友の不倫へ…

「プロタゴラス」

プラトン著 古代ギリシア哲学者 若きソクラテスが賢老人プロタゴラスに学ぶ 2400年前の対話記録が今も残っているのはそれだけで奇跡 プロタゴラスとの会話で”無知の知”に目覚めていく 結論はないが寧ろそれが答えでもある 現代でも常識を受け入れる日本思想…

「ソクラテスの弁明」

プラトン著 古代ギリシア哲学者 勉強するほど知識不足を痛感する 個人的に読書を続ける理由 逆におバカほど自信過剰なのは知識を深掘りしないし出来ないから 自分の能力を把握する大切さ ソクラテス曰く”無知の知” 彼の批判する金儲け主義者ソフィスト(職業…

「メノン」

プラトン著 古代ギリシア哲学者 “プラトニックラブ(理想的恋愛)” 余りに理想主義であるため名前が理想的という形容詞になったプラトン 晩年シラクサで理想政治を敷くも失敗 だが徳を尊んだのも事実 ソクラテスと愛弟子メノンの対話を用い幾何学から論理学ま…

「千一夜物語 13」

940〜1001話収録 ムハンマド〜バイバルスの英雄と歴史を語る“知恵と歴史の天窓” 狂人女房と夫の破局過程“蜂蜜入りの乱れ髪菓子と靴直しの禍を撒き散らす女房” 失明した王を救うべく海の薔薇を探し美女の百合の顔に一目惚れする”海の薔薇とシナの乙女の物語” …

「千一夜物語 12」

882〜939話収録 12人の警察隊長が語る庶民ぶらりバイバルス版“バイバルス王と警察隊長” 乙女による花鳥風月の詩吟“心の傑作の鳥の女代官” 貴重な中世アラブ児童文化と生活日誌”のどかな青春の団欒” これまたペルセウス的な冒険譚”金剛王子の華麗な物語” スー…

「千一夜物語 11」

821〜881話収録 “アリババと40人の盗賊” シムシム(胡麻)の呪文で盗賊の宝物庫が現れ大金持ちに 強欲な兄と兄嫁は悪用を企むが盗賊にバレ殺害 実は不義の子と知らされたカリフとそれを暴いた学者の末路“気の毒な不義の子の話” 没落王が残虐姫を改心させる“九…

「千一夜物語 10」

774〜826話収録 本場エジプトで錬金術の秘法を巡る”運命の鍵” 従姉妹に恋する三兄弟の争奪戦と三種の神器的な貢ぎ物探し”ヌレンナハール姫と美しい魔女” 笑いありのアラブとんち集”巧みな諧謔と楽しい頓知” 異民族のベドゥィンやキリスト教徒も活躍しイスラ…

「千一夜物語 9」

622〜773話収録 550Pの大容量 目玉はやはり”アラジンと魔法のランプ” 実はアラジンさん中国人で舞台も中国 聖霊ジンのボスは巨鳥ロック ジャスミン役はバドルール=ブドゥール 漁師の1dayカリフ体験談”目を覚ました永眠の男” フランク人女王の改宗と勇敢な男…

「千一夜物語 8」

515〜621話収録 白い都を追放された女の冒険“石榴の花と月の微笑” サラディン期の十字軍残党のイスラム改宗物語”エジプトの百姓とその色白き子供たち” 奴隷を競売から救う”カリーフと教王” 奴隷5人の冒険談探しの冒険”ハサン=アル=バスリの冒険” 13巻中で…

「千一夜物語 7」

414〜515話収録 空飛ぶ馬の浪漫飛行”黒壇の馬奇譚” クロサギ的な詐欺師サバイバル”水銀vsペテン女&娘vsペストvs蛾の騙し合い” 人魚と人間の交流を描く”陸と海のアブドゥッラー” 無限調理できる聖霊を巡る兄弟の争奪戦”漁師ジゥデルと魔法の袋” 何故かオナラ…

「千一夜物語 6」

331〜414話収録 アラブの知恵が光る21の短話”知恵の花園と粋の庭” ギリシア神話ハデスとデメテルを想起する”地下の姫ヤムリカ” 壺と人魚を巡る青銅の町の冒険”青銅の町の奇談” イエメン富豪の女奴隷達の歌舞合戦”色異なる6人の乙女の物語” ギリシア・ローマ…

「千一夜物語 5」

237〜331話収録 7つの海を渡る“シンドバッドの冒険” ジェノヴァも舞台となる”黒子の物語” 珍しく学問・宗教を討論する”博学のタワッドドの物語” オデュッセイア的な”カラマルザーンと姫と月の物語” 不思議と悪役は老婆で老爺は賢者 悲劇が多いヨーロッパ童謡…

「千一夜物語 4」

130〜236話収録 短編と猥談が増加 メインは”シンドバッドの冒険”と”鳥獣佳話” 多数の動物・料理が登場しイスラム文化圏の広さを再確認 ハールーン=アッラシードが一般人に紛れ旅する様はスティーブンソン著「新アラビア夜話」と同じ シンドバッド(インドの…

「千一夜物語 3」

45〜122話収録 1巻丸ごと”オマル=アル=ネマーン王の軍物語 トルコを舞台に3世代に渡る美女争奪戦はキリスト教vsイスラム教のトロイ戦争 恐らく逆十字軍を想定した話 黒幕“災厄の母”こと戦争請負老婆の奸智が冴える ご都合主義も多いが千一夜物語中で唯一の…

「千一夜物語 2」

24〜44話収録 バグダードの床屋”沈黙家”が語る6人兄弟仕立屋の話 回想に回想を重ねており南米魔術文学っぽい 身体損傷罰の多さやビザンツ帝国のドラクマ金貨が流通などに驚く “せむし男とキリスト教徒の仲買人とユダヤの医者”は当時の宗教別職業割当傾向が伺…

「千一夜物語 1」

アラブ民謡集 1〜23夜を収録 毎夜インドとシナの王シャハリヤールは女性不信から処女を奪い殺す 明晰な妾シェヘラザードが1001話と読み聞かせ救う 意外と性や酒に奔放なイスラム ジン(聖霊)が登場し史実のサラディンやハールーン=アッラシードも登場 話自体…