MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2024-03-19 to 1 day

「セポイの反乱」

ジェームズ=ゴードン=ファレル著 イギリス作家 ブッカー賞受賞作 1857年インド大反乱の内幕を描く歴史小説 傲慢な東インド会社駐在員は獣脂弾薬の使用でインド諸宗教の反感を買い全土反乱へ 弾幕の雨が降り血で川が流れ燃える 一方でイギリス人も迫害を受…

「トラスカラ人の罪」

一日一編 20世紀ラテンアメリカ短編選 エレーナ=ガーロ著 メキシコ作家 ノーベル賞詩人オクタビオ・パスの元妻 夢と現実が時空を超えて融合する短編 スペイン人襲来時の先住民トラスカラ人の近親相姦の従兄弟 しかし少女は仲間を売っていた… 更に現代の若奥…

「G.」

ジョン=バージャー著 イギリス作家・美術批評家 ブッカー賞受賞作 第一次大戦を機に政治へと目覚める現代版ドン・ファン“G”の絶倫変遷 1人称=自慰 2人称=性交 3人称=視姦 現代はエロスよりセックス 宗教よりカルトの時代 美術批評家だけあり一般の伝統的英…

「日蝕」

一日一編 20世紀ラテンアメリカ短編選 アウグスト=モンテローソ著 ホンジュラス出身グアテマラ作家 7語から成る世界最短の短編「恐竜」で有名 日蝕にて先住民に心臓を贄にされる男 ”太陽を隠す!”とアリストテレス級の知恵で脅す だが古代マヤの天文学は西…

「シンドラーのリスト」

トマス=キリーニー著 オーストラリア作家 ブッカー賞受賞作 スピルバーグ映画原作 ポーランドの強制労働を理由に 1200人のユダヤ人を救ったドイツ実業家 オスカー・シンドラー 守銭奴・女衒・美食家・裏切者… 仲間を売り友を見捨て子を間引く絶望の裏に隠さ…

「フランク・オコナー短編集」

フランク=オコナー著 アイルランド作家 11短編集 日常からテロまで 老若男女から多階級多職種まで フロイトからマルクスまで ミステリ風から回顧録まで あらゆる要素と技巧を用い素朴な風景を通してリアリズムに調理した変幻自在の短編たち 確かにどれも”チ…

「大帽子男の伝説」

一日一編 20世紀ラテンアメリカ短編選 ミゲル=アンヘル=アストゥリアス著 ノーベル賞グアテマラ作家 マジックリアリズムの祖が魅せるスペイン支配史への婉曲寓意 白い鞠遊び=白人地球支配? 大帽子男伝説=現地伝統帽子ソンブレロ? 美術学問通修道士の受胎…

「ガリバー」

クロード=シモン著 ノーベル賞マダガスカル出身フランス作家 「ガリバー旅行記」に準じた4部構成を第二次世界大戦下フランスの裏社会史 早期にナチに降伏し異邦人として逃げ続けスパイとして仲間や親族を売り故郷を捨てざるを得ない人々 ある意味”戦争より…

「ワリマイ」

一日一編 20世紀ラテンアメリカ短編選 イザベル=アジェンデ著 チリ作家 「エバ・ルーナのお話」からの抜粋 “愛より死の方が強いと知った” 名前を口にすれば生命力を取り込むことができる男ワリマイ 超自然的存在でありながらイラ族の娘と共に生活することで…

「チャック・モール」

一日一編 20世紀ラテンアメリカ短編選 カルロス=フエンテス著 メキシコ作家 マヤ雨神チャック・モールの発掘像を骨董屋からメキシコシティ蚤の市で入手した男 直に石膏製と判明し萎えるも苔を削ぐと腋毛が伸びて人間のように振る舞い始める 男は像を棺桶に…