MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-11-15 to 1 day

「ガラテイア2.2」

リチャード=パワーズ著 アメリカ作家 半自伝 ギリシア神話でピグマリオンが創造した大理石の乙女”ガラテイア” 深層学習可能なAIの教育係になった作家リチャード AIに文学知識を授ける内に記号的解釈から作家の”書けない性”を持つ感情物語へと移っていく様が…

「死の舞踏」

一日一編 ドイツ怪談集 カール=ハンス=シュトローブル著 ナチに共鳴したチェコ系ドイツ作家 サン=サーンスの同名作曲や中世美術様式と同様に所謂”メメントモリ”のペスト寓話 医学生が仮面舞踏会で見初めた女は死んだ恋人だった 医学的な見地から幻想を語…

「カディスのカーニバル」

一日一編 ドイツ怪談集 ハンス=ハインツ=エーベルス著 地中海と大西洋の窓口”白い街”カディス カーニバル(謝肉祭)で賑わう奴隷貿易港は美女に宝石にグルメの祭典 唐突に巨大な木の幹が現れその場に溶け込んでいる 機会な行動を取る巨木は中に人がいるのか?…

「こおろぎ遊び」

一日一編 ドイツ怪談集 グスタフ=マイリンク著 世紀末プラハと来る第一次世界大戦の終末観とオリエンタリズム感が漂う短編 チベットやブータンの未開地域で呪術師や密教徒を探す欧米学者 そこで出逢ったボン教徒の不気味な”こおろぎ召喚者” こおろぎが蠢く…

「エコー・メイカー」

リチャード=パワーズ著 アメリカ作家 全米図書賞受賞作 カナダヅル またの名を”エコー・メイカー” “鶴の街”で唯一の肉親の弟が事故に遭う 真相は不明 奇跡的生還も束の間 愛した人ほど偽物だと脳が否認し義憤する奇病”カプグラ症候群” 愛を叫ぶ姉の悲痛な谺…

「黄金虫変奏曲」

リチャード=パワーズ著 アメリカ作家 2段組850Pの超長編 “Gold bug”=ポー「黄金虫」 “Goldberg variations”=バッハ「ゴルトベルク変奏曲」 GATC=2重螺旋構造の4塩基 男女2ペア=恋と研究生活 分子生物学・遺伝学・音楽・言語学・芸術・歴史・文学… 遺伝暗号…

「騎士バッソンピエールの奇妙な冒険」

一日一編 ドイツ怪談集 フーゴー=フォン=ホーフマンスタール著 世紀末ウィーンを代表する早熟の劇作家 何か起きそうで起きないがやはり起きるという持ち込み方が上手い フランス巡遊中に奇妙な体験をする騎士 それは現実か? 蜃気楼か? 夢か? それとも…?

「奇妙な幽霊物語」

一日一編 ドイツ怪談集 ヨハン=ペーター=ヘーベル著 スイス(当時ドイツ領)とバーデン地方のアネクドート文学 デンマーク旅行回顧中の殿方 そこで目にした幽霊の後を辿るとメフィストフェレスと秘密結社が贋金作りに励んでいた 後日豪華な金細工品が送られ…

「オルラッハの娘」

一日一編 ドイツ怪談集 ユスティーヌス=ケルナー著 神秘学や降霊術を研究した医師の描くホラー 元来ドイツは魔女狩りやエクソシスト等が盛んだが実体験に基づくため鬼気迫る短編 悪魔に憑かれた娘は白と黒の霊に怯える日々を送る その背景には400年前の修道…

「ジュリアン・バトラーの真実の生涯」

川本直著 F=架空の作家ジュリアン・バトラー NF=実在のアメリカ有名作家たち ナボコフ「セバスチャン・ナイトの真実の生涯」同様に虚実混淆の”伝記+後記+参考文献”が炙り出す”20世紀アメリカ文壇史” 該博な文学知識と言語遊戯は批評家と翻訳家の著者の面目躍…

「金髪のエックベルト」

一日一編 ドイツ怪談集 ルートヴィヒ=ティーク著 ドイツ・ロマン派の帝王が描く所謂メルヘンホラー 金言・近親相姦・騎士物語・復讐・同性愛・夢… 様々なテーマを誘導しながら予測不可能な展開で捌くのが巧み 騎士エックベルトの数奇な人生をミステリタッチ…

「廃屋」

一日一編 ドイツ怪談集 エルンスト=テオドール=アマデウス=ホフマン著 美しい歴史都市に越してきた貴族 街の美観に感服する彼だが調和を乱すような1廃屋により興奮する性質があった 廃屋の鏡で見た女性を追う内に現実と虚実の境目が倒錯し始めて…? “事実…

「ロカルノの女乞食」

一日一編 ドイツ怪談集 ハインリヒ=フォン=クライスト著 ロカルノ条約で有名な低標高のスイス保養地にして旧神聖ローマ帝国イタリア語圏の景勝地 旅中の侯爵夫人と邂逅する女乞食 乞食に幽霊出没の噂を聞き信じてしまうことで狂気と倒錯に陥り破滅的行動を…