MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-10-18 to 1 day

「水いろの瞳」

一日一編 フランス怪談集 レミ=ド=グウルモン著 格調高い堀口大學訳が魅力的 ”水いろの瞳”を周囲から恐れられコンプレックスに感じる女 一方そんな彼女の瞳を肯定する男か現れる 肌や瞳の色で人を差別するのは容易い しかしその個性を枷に感じ狂気に至る人…

「肉食の思想」

食が歴史と国家精神を定義する Q.なぜ類似のシステムでもヨーロッパと日本の政治体制には天と地ほど違うのか? A.ヨーロッパが肉食文化だから 肉食は個人主義を生み自衛権と私有財産を保証し階級社会の保持と労働者の連帯を促した 国語や歴史は改竄も隠蔽も…

「真紅のカーテン」

一日一編 フランス怪談集 ジュール=バルベー=ドールヴィイ著 映画「恋ざんげ」原作 ゾラ中心の写実主義に反発しバロック的作風を好んだ没落貴族出身者のらしさ満載の短編 ナポレオン軍の若きエリート子爵が老夫婦と美少女の住む家に一時滞在する 当然のよ…

「ソロモンの歌」

トニ=モリスン著 ノーベル賞アメリカ作家 少年になっても母の乳を飲む黒人はミルクマンと綽名された 内気な彼はしかし悪友の導きで密造酒売買を皮切りに自身の家系を辿る長い旅を始める “誰もが黒人の命を欲しがっている” 過酷なアメリカ黒人の人生はそれ自…

「イールのヴィーナス」

一日一編 フランス怪談集 プロスペル=メリメ著 美しきおフランスのお麗しき村でのお記念となりし華やかな結婚式 “愛と美の女神”アフロディテ 或いは英名ヴィーナスも祝福を賜らんとして下さるはずだった… 悪戯にヴィーナス像に結婚指輪を嵌めたことで悍しい…

「アフリカ史」

地中海沿岸諸国を除く素晴らしいアフリカ史概観 🇰🇪季節風貿易史 🇷🇼ツチvsフツ 🇺🇬ブガンダ王国 🇹🇿ザンジバルとの連合国家 🇪🇹日露戦争前に列強に下した皇帝メネリク2世 🇿🇦ズールー王シャカ 🇬🇭奴隷貿易 🇨🇩近代専制国家 🇸🇩マフディー運動 🇸🇳サモリ・トゥーレ 🇳🇬内戦と呪術 マンサ・ムー…

「パワーズ・ブック」

“第2のピンチョン”リチャード・パワーズ 博覧強記の作家を日本のアメリカ文学者達が語る 本人へのインタビューも収録 「舞踏会へ向かう三人の農夫」 「囚人のジレンマ」 「ゲイン」 「ガラティア2.2」 「黄金虫変奏曲」 「ワンダリングソウル作戦」 当時刊行…

「死霊の恋」

一日一編 フランス怪談集 テオフィル=ゴーティエ著 ヨーロッパ1の吸血鬼小説の1つとされる有名な短編 聖職者人生が始まる直前に絶世の美女高級娼婦に惚れられた男 しかし彼女は吸血鬼だった 人と人ならざる者の禁断の恋の行方は? 「ロミオとジュリエット」…

「女であること」

川端康成著 日本ノーベル賞作家 “女”とは何か? “女であること”とは何を意味するか? “女であろうとする”為には何が必要か? 死刑囚の父を持つ苦悩の美少女 関西弁ドタバタ家出美女 美少女の養母となった弁護士妻の美熟女 齢離れし3人の美しい女の心理を美し…

「堕ちてゆく男」

ドン=デリーロ著 アメリカ作家 事件前「アンダーワールド」でビル攻撃を予見した作家が満を持して語る”9.11証言録” 加被害者双方と多様な人物から見た事件を臨場感が当時の衝撃を保持したまま語られる 世界各地で安全ベルトを着けて墜落パフォーマンスを行…

「反復」

ペーター=ハントケ著 ノーベル賞オーストリア作家・戯曲家 母:スロヴェニア人 父:オーストリア人 兄:世界大戦で行方不明 1日で4半世紀の自身と兄の人生を振り返る旅を描く半自伝 静謐で美しい文章と詩的・叙事的・抒情的・思弁的・風景的・政治的な回想 行…

「魔法の手」

一日一編 フランス怪談集 ジェラール=ド=ネルヴァル著 白魔術(人を癒す)と黒魔術(悪魔と契約して人を呪う)と予知能力を扱う者の業を描く パリを中心とした歴代国王や歴史の該博な宮廷裏話から生まれたスピンオフ的短編で面白い 整然と論理と物語を叙事的に…