MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-10-14 to 1 day

「岬」

中上健次著 4中編集 “黄金比の朝” 浪人生と兄の自殺で当時の社会の虚無と孤独を描く “火宅” 前時代的DVと核家族解体期における悲劇 “浄徳寺ツアー” 現代の聖と俗の間隙を描く “岬” 芥川賞受賞作 血と泥の臭いを感じる密度濃く悍しく汚く激しい文体 異母兄弟…

「ロシア怪談集」総書評

“ロシアの怪談おそロシア!” 代表的なロシア作家のダークな短編大集合 近現代ロシア作家と言えばリアリズム作家の印象が強いが幻想短編やホラーも珍しくない 広大な国土に厳しい寒さや宗教観に革命やソ連期まで 西欧列強とはまた異なる或いは比較可能な視点…

「博物館を訪ねて」

一日一編 ロシア怪談集 ウラジーミル=ナボコフ著 アメリカ亡命前ロシア語によるカフカ的幻想短編 お目当ての肖像画を観に博物館を訪ねたが見当たらない その作者の絵は肖像画でなく田園風景画しかないと すると風景画の雪景色に迷い込み…? お得意の言語遊…

「ベネジクトフ」

一日一編 ロシア怪談集 アレクサンドル=ワシリエヴィチ=チャヤーノフ著 反スターリンで銃殺されたことでも有名な著名農業経済学者 “植物学者X”の語る博識な怪奇幻想短編 苦境を楽しむ陽気な姿は「イワン・デニーソヴィチの一日」を想起する 当時のソ連社会…

「ワシントン・スクエア」

ヘンリー=ジェイムズ アメリカ出身イギリス作家 「ある婦人の肖像」縮小版 NYの偉大な医者を父に持つ娘 平凡な彼女に父の遺産目当てで近寄る伊達男 男に夢中になる恋心と反対する父への反発 心の天秤はどちらに傾く? 万華鏡と顕微鏡を合わせた写実的で精彩…