MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-10-05 to 1 day

「幽霊」

一日一編 ロシア怪談集 ウラジーミル=フョードロヴィチ=オドエフスキー著 “ミイラ取りがミイラになる”的短編 “お化けなんて嘘さ!”と豪語すらお喋りな老人 しかし居合わせた列車で安易に怪談を始めた結果その怪談に準じた幽霊が召喚され…? SF・ロマン派・…

「黄泥街」

残雪著 中国作家 処女長編 “王光子が黄泥街に戻ってきた!” 沸き立つ民衆 跋扈する蛇蝎と蠱毒 氾濫する糞尿 この世の汚物が全て集結したグロテスクな想像 行為と被行為 主体と客体 現実と幻想 真実と虚実 凡ゆる二項対立が累乗されたらあら不思議 曖昧極まる…

「ヴィイ」

一日一編 ロシア怪談集 ニコライ=ヴァシーリエヴィチ=ゴーゴリ著 “この街では女はみな魔女なのだからな…!” ウクライナ出身の作家らしくドラキュラ(ルーマニア起源)や魔女の様なゴシック感があるホラー 夜になると棺のまま起き上がる女子と神学生の神に懸…

「世界のすごい島300」

日本含む世界の特徴的な島を”すごい理由”と共に紹介 日本:6853島(8位) スウェーデン: 221800島(1位) グリーンランド:世界最大の島 島は生態系・歴史・民族・文化・気候など大陸と異なる歴史を歩むことが多い 旅人目線だと島は大陸より行きにくい事が多く好奇…

「草原に黄色い花を見つける」

グエン=ニヤット=アイン著 ベトナム作家 国民的作家のベトナム版「スタンド・バイ・ミー」 有彩色で最も明るい黄色の花が青い春に引導を渡す”最後の子供の時間” 恋に勉強に強がりで泣き虫で残酷で優しい不安定な思春期 ベトナム戦争後&経済成長前の田園に…

「思いがけない客」

一日一編 ロシア怪談集 ミハイル=ニコラエヴィチ=ザゴスキン著 僕の父は気前が良いけど聖者が天使に化けた悪魔に唆されて踊る話に疑問を感じたんだよね そこに巨漢コサックが4人来て饗してたら踊れと言われたんだ 怖くて夢だと思って目覚めたら夢だった ……

「オーバーストーリー」

リチャード=パワーズ著 アメリカ作家 ピュリッツァー賞受賞作 最新の研究で樹木の会話・思索・感情の仕組みが確認された カリフォルニア州の天を覆うアメリカ最後の原生林 西海岸らしい多国籍で多様なバックを持つ9人を軸にアメリカ森林史そのものを壮大な…

「葬儀屋」

一日一編 ロシア怪談集 アレクサンドル=セルゲーヴィチ=プーシキン著 葬儀屋から送られてきた新居祝いのプレゼント それは亡者との対話 抱擁する髑髏 降臨する骸 乾杯する招かれ人 近代ロシア国民的詩人の送るシュールレアリズム的ホラー カトリックと違う…

「怒りの葡萄」総書評

先住民・白人・移住・資本主義・経済格差・農民・移動・農村・サーガ・暴力・贖罪・西部劇・災害… これほど”アメリカ古典文学”に相応しい作品はない 料理や車の修理まで透徹したリアリズムで描きながら聖書挿話とも連動 搾られた葡萄の怒りは”イエスが鮮血”…

「怒りの葡萄 下」

ジョン=スタインベック著 ノーベル賞アメリカ作家 「出エジプト記」後ユダヤ人の如く移動と共に離散していくジェード家 だがカリフォルニアも約束の地ではなく低賃金搾取労働が始まっていた… 警戒する資本家に対し共産主義主張とストライキで抵抗する労働者…

「怒りの葡萄 上」

ジョン=スタインベック著 ノーベル賞アメリカ作家 ピュリッツァー賞&全米図書賞受賞作 聖書の警句“怒りの葡萄” 大不況と砂嵐による穀物不作 住民は家財を取払いオクラホマからテント移動で約束の地カリフォルニアへ向かう その道はかつての白人が先住民を迫…

「雨の少女達」

ソジ=ミキ著 ドバイ(アラブ首長国連邦)作家 まさかのドバイ文学 少女&少年漫画チックなファンタジー ハードボイルド×サスペンス×シスターフッド×スクール×バトルの会話中心の王道ラノベみたいな感じ 中東の歴史や神話が使われており爆弾や殺人事件に学園モ…

「こびとが打ち上げた小さなボール」

チョ=セヒ著 韓国作家 連作短篇集 10次元宇宙”超ひも理論“的メビウスの輪 それは開発独裁の矛盾を孕む”内憂外患”の政治体制にも似ている 高度経済成長と貧富の格差が蔓延る1970年代ソウルの闇を遍く描いた作品 社会に圧殺される”こびと”が象徴するスラム街…

「隋」

400年ぶりに中華統一を成すも40年2代で滅亡した隋 皇帝・天河岸・仏僧の顔を持つ天子を演じ鮮卑系外戚から河北を平定した楊堅 突厥と吐谷渾を征伐し高句麗征服のため大運河を建設したが夢半ばに終わった煬帝 運河は江南の農業発展を促し科挙も開始 成長痛で…

「世界滅亡国家史」

無名な48カ国の滅亡史 <リフレッシュ諸島> 寄島者に快楽提供→海賊が来て滅亡 <コスパイア共和国> 国境引き間違い→煙草で400年存続 <満洲国> 傀儡政権丸見えで滅亡 <ラフ・アンド・レディ共和国> 禁酒で滅亡 <新羅> 骨で身分を決めて滅亡 49番目は日本国かも…

「20世紀アメリカ短篇選」総書評

アメリカ文学オールスターの傑作選 作品は都会2割に田舎8割 移民・LGBT・人種と近年のポリコレ要素は皆無 代わりに白人中心だが良くも悪くもアメリカの原風景を収めた個々の才能に拠る古典的作品が多い 一日一編に最適 文学は時代を最も反映するためアメリカ…

「20世紀アメリカ短篇選 下」

主題が明確だった先鋭的なモダニズムは鳴りを顰め漠然とした個人や世界の不条理を描くポスト・モダニズムの時代へ 映画やアメコミのマッチョさとは正反対に文学は繊細で弱い逃避者が中心 カフカの不条理 プルーストの記憶 ジョイスの言語 上記3要素の浸透&膾…

「たいへん幸福な詩」

一日一編 20世紀アメリカ文学短編選 フィリップ=ロス著 文系インテリ夫人が憤慨ヒステリ不憫に陥る話 詩を詠い優雅にアパートで暮らす女性 彼女は理知的な人間との自負があった だが腎炎を患い旦那には浮気され自身も復讐がてら不倫を企むが相手に拒絶され…

「インドーグローバル・サウスの超大国」

経済格差・人口・IT人材・宗教・民主主義・男女格差… 様々な”世界一”を有する潜在性No.1の大国インド(バーラタ) 将来の南アジアは世界人口の2/3を占めるという 現代政治・財閥企業・柔軟外交・モディ首相・経済政策・州別文化・投資事情とビジネス中心に紹介