MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-09-26 to 1 day

「黄金の雨」

一日一編 20世紀アメリカ文学短編選 ドナルド=バーセルミ著 ギリシア神話では”黄金の雨”に変身したゼウスがダナエと交わり英雄ペルセウスが誕生した 出演依頼を受けた芸術家はTV制作者の噛み合わないがテンポ良い問答に憤り始める 傲慢なTVに不条理を感じた…

「闇夜海中の旅」

一日一編 20世紀アメリカ文学短編選 ジョン=バース著 男性の1回の射精量には精子が3億個含まれるという 卵巣を目指して本能の趣くまま膣道を泳ぐ精子を底知れぬ深い海を泳ぐ人間に見立てた点が独特 溺れ死んでいく3億個の同胞に痛みながら遺伝形質を紡ぐ姿…

「ゼラニューム」

一日一編 20世紀アメリカ文学短編選 フラナリー=オコナー著 被介護のため娘に連れられ田舎からNYのアパートへと引っ越した老人 静寂が包む懐かしき故郷の過去 煩雑で騒々しい都市生活の現在 2つの記憶を繋ぐ唯一の文物”ゼラニューム”に固執する 都会と田舎…

「千羽鶴」

川端康成著 日本ノーベル賞作家 男の不倫相手だった妖艶な美熟女が死んだ そして彼は彼女の娘とも逢瀬を重ねる 婦人の官能的な魅力と彼女の遺品の茶碗名器”志野”の芸術性に重ねて想起する 陶器の肌触りを肉体の肌触りに思わせる官能的な文章 連載形式だけあ…

「ミスター・ヴァーティゴ」

ポール=オースター著 アメリカ作家 謎の男に空中浮遊を伝授された9歳の孤児 各地でサーカス行を重ね”全米で最も有名な14歳”となる だがそれが人生のピークだった… スラムからの成功とスターダムからの転落 最悪と最高の巡り合わせ 老境を迎え達観する時に何…

「ミリアム」

一日一編 20世紀アメリカ文学短編選 トルーマン=カポーティ著 老女ミリアムの元に同じ名前の不気味な少女ミリアムが現れる 恐怖から逃れるべく様々な対策を取るが…? 幻覚か? 精神異常か? 幽霊か? 何にせよ絶品のホラー 映画「エスター」や「アッシャー…

「バーンハウス心霊力についてのレポート」

一日一編 20世紀アメリカ文学短編選 カート=ヴォガネット=ジュニア著 世界を1人で破壊できる”第六の力”バーンハウス心霊力を発見した博士 冷戦期の核戦争を痛烈に皮肉るテーマに”笑い”を加えてユーモア化 その意味でサリンジャー「笑い男」にも類似する