MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-03-02 to 1 day

「不快な夕闇」

マリーケ=ルカス=ライネフェルト著オランダ作家・詩人国際ブッカー賞受賞作(処女作&最年少29歳)喧嘩中の兄に一時の感情で屠殺兎の身代りを願った妹氷穴に落ちて本当に兄が死去する宗教に一層縋る父母家を嫌悪し始める姉弟妹は2度と事件当日の上着を脱がず…

川上未映子全23冊読破記念総書評

詩と小説リズムと哲学性差と女体倫理と悪徳自意識と同調美人でお茶目な未映子さん二元論だけでない社会の白黒に分断されがちなグレーの領域を深掘りするボーヴォワール提唱から半世紀「第2の性」から共感と違和感の声を等しく掬う実行力と使命感が心を揺さぶ…

「ヘヴン」

川上未映子著国際ブッカー賞最終候補“ーわたしたちは仲間ですー”壮絶な虐めを受ける”斜視の少年”と”貧乏な少女”似た境遇の2人は次第に言葉と心を通わせ偽善的な加害者に牙を向けていくこの世界に意味なんてない天国も地獄も論理も同調圧力も無碍の境地に達し…

「おめかしの引力」

川上未映子著“おめかし”は女性のアドレナリン爆発を促すその日の喜怒哀楽を決める引力になる朝日新聞連載のファッションコラムを文庫化女性のお洒落の心理がこんなに複雑とは思わなかった…常にスカートしか履かない未映子さん当方ブランド品等の服や装飾に疎…

「みみずくは黄昏に飛び立つ」

川上未映子&村上春樹共著“聞き手”川上未映子“話し手”村上春樹刊行直後の「騎士団長殺し」の裏話をメインに村上春樹の創作世界と文体の真髄に迫る2人とも音楽・フロイト深層心理学が作品の核にある作家なので気が合う(当方もなんだかんだで読了数が多いハルキ…

「そら頭はでかいです 世界がすこんと入ります」

川上未映子著小説執筆前の売れない歌手時代のブログ集“こんなの誰が見るんだろう?”と思いながら毎日綴っていたそうその文才とリズムに本人と編集者が可能性に気付くそれが処女中編「わたくし率 イン歯 または世界」執筆の契機となった…泣ける話

「六つの星星」

川上未映子著著者と各分野著名人の対話×斎藤環(脳科学者)×福岡進一(生物学者) ※当時ノーベル賞未受賞×松浦理英子(作家)×穂村弘(詩人)×多和田葉子(作家)×永井均(哲学者)特に初期作風は詩と哲学と女性の身体性を扱っていた著者その一線で活躍する知識人から見…

「わたくし率 イン歯ー または世界」

川上未映子著1中編1短編“わたくし率 イン歯ー または世界”芥川賞候補作人間の思考を司るのは”脳”ではなく”奥歯”と考えた主人公“奥歯=わたくしの割合=世界”で好きな人を「雪国」の文体で哲学的に考えてみる“感じる専門家 採用試験”受胎告知妊婦の理想と葛藤

「すべてはあの謎にむかって」

川上未映子著エッセイ集時にゆるり!時にピーン!「ぜんぶの後に残るもの」「オモロマンティック・ボム!」「人生が用意するもの」ネットや紙面に連載された雑文と日々の記録愉快で優しい同時にこうして日常を観察したからこそ大衆文芸を書けるのだと思わさ…

短編コレクション個人的ベスト

「池澤夏樹=個人編纂 世界文学全集 短編コレクション」いやはや面白かった… 自分だったらこんな作品を選ぶなというリストを作成したくなった というわけで個人的ベストは以下です

「池澤夏樹 短編コレクションI&II」2冊39作品読破

#一日一編I…アフリカ・南北中米・アジア中心II…ヨーロッパ中心短編は基本的に少数のテーマを扱い無駄なく蒸留したワインと同じ故に作家の個性・人生・才能がよく分かるそれ即ち多様性であり未知への招待手軽に極上フルコースを味わえる傑作選

「ランサローテ」

#一日一編19作目ミシェル=ウェルベック著フランス作家“イスラムでもなく西欧でもない非現代文明に浸る旅行先ってありますか?”カナリア諸島の火山島ランサローテ独自の生態系と本島スペイン以外の多民族観光と移住が特徴そんな島すらカルトとセックスが蠢き…