MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2022-10-22 to 1 day

「三島由紀夫の美学講座」

三島由紀夫著男性は彫刻女性は絵画知性と肉体が均衡化した古代ギリシア的美学を是とした美学芸術論が基本これに基づく谷崎潤一郎や西洋古典の評論彫刻・詩・室内装飾・廃墟・肉体論・建築・庭園・芸術・音楽・文学論…該博な知識は勿論だが持ち前の美麗な文章…

「アフリカ農場物語 下」

自然と緑に囲まれ平和共存し美しく育った3人の少年少女そこにナポレオンに憧れる白人が現れ金の力で狡猾な蹂躙を広げていく神はいるのか?愛とは何か?幸せとは何か?現代科学も古来より続く哲学的命題の答えを未だ出せていない英国首相グラッドストンも影響…

「アフリカ農場物語 上」

オリーブ=シュライナー著南アフリカ作家オランダ→イギリス支配になったケープ植民地の某農場多国籍移民と科学啓蒙にフェミニズムに目醒める少女の成長譚ボーア戦争前の長閑なグレートトレック時代の古典アパルトヘイト完成後を描くクッツェーやゴーディマと…

「ダンス・ダンス・ダンス 下」

村上春樹著あの頃の資本主義化の波で何を忘れたのか?諧謔のリズムでロリータ連れて逃避行ホノルルで逢う宮崎駿の娘たち“オドルンダヨ…”と言う割にあまり踊らない昭和的レトロな懐かしさと現代化の退廃の面を感じさせる不思議な世界爽やかで陰鬱なモダンホラ…

「ダンス・ダンス・ダンス 上」

村上春樹著青春3部作完結編札幌での”羊をめぐる冒険”から4年…羊男と異世界が再び出現2枚目俳優若枯れした作家作家の美少女娘フィリピン人娼婦隻腕のベトナム詩人セックスと羊男とときどき殺人…“文化的雪かき女性”を発掘する冴えないライターの不思議な冒険

「心経」

閻連科著中国作家仏教・イスラム教・キリスト教・道教・プロテスタント(天主教)某施設の中国5大宗教信徒の宗教合同セミナー尼僧と道士が禁断の恋に明け暮れ各教徒も悉く欲に負け堕落一方で苛烈する出世道の合同競技”綱引き”の行方は…?中国共産党の宗教政策…

「イスラム紀行 下」

ヴィディアダハル=スラヤプラサド=ナイポール著 ノーベル賞トリニダード=トバゴ作家<パキスタン>大国インドと袂を分かちイスラム回帰する長所と短所<イラン>イスラム革命直後の政治と宗教の変化を追う<マレーシア>華僑の経済力と印僑の宗教権威で潤うマレ…

「イスラム紀行 上」

ヴィディアダハル=スラヤプラサド=ナイポール著ノーベル賞トリニダード=トバゴ作家パキスタンイランマレーシアインドネシア“多人口の非アラブ圏イスラム国家”をインド系移民の著者が旅し一般市民と交流しながら具に観察する批評家や紀行家としての慧眼も…

「モンテ・フェルモの丘の家」

ナタリア=ギンズブルク著イタリア作家手紙交換リレー形式の小説”マルガリーテの館”で共に育んだ友情はしかし人生の転機で不可逆的な思い出に変わっていく多種多様な人物の文通で設定が徐々に重なっていき密度濃く収斂していく様が見事寂寥と喪失が人生の儚…

「アルトゥーロの島」

エルサ=モランテ著イタリア作家南イタリア孤島”1人だけの少年の楽園”不在がちの父が自分と2歳違いの若妻と共に帰郷し楽園崩壊母性と父性と異性と知性の葛藤はフラつきながら大人の階段を駆け上がる腹違いの弟も誕生し…?クローズドサークル+近親相姦的神話…

「太陽と鉄/私の遍歴時代」

三島由紀夫著インタビュー集“太陽と鉄”恐らく世界で最も流麗な言葉で書かれた筋トレ論(+肉体論)更に死とエロティシズム“楯の会”を結成し政治にも積極介入した三島“敵は自民党!現政府!現天皇制!戦後体制そのものだ!”45年の人生とは思えない程の密度の濃さ…

「肉体の学校」

三島由紀夫著戦前の閉塞的な結婚生活から解放された戦後女性元華族女性の愉快痛快な自由礼賛ぶりを描く三島版「SEX AND THE CITY」富裕層中年寡婦お嬢様vs玉の輿狙いの若きゲイバー美男子“振り向かせては振り向いて…?”男と女の巧みな心理戦とスピード感のあ…

「インドへの道」

エドワード=モーガン=フォースター著イギリス作家英領インド帝国ムスリム藩王国親英vs嫌英vs親印vs嫌印=?“オリエンタリズム以上グローバリズム未満”の文明の衝突証言者なき洞窟での令嬢襲撃は嘘か誠か…?英印両市民の支配vs被支配のリアルを多階級多文化…

「エバ・ルーナ」

イサベル=アジェンデ著チリ作家著者の亡命先ベネズエラが舞台の半自伝的マジックリアリズム密林の孤児と先住民の娘にして天性の語り部”エバ”剥製博士・幼馴染の不良・将校・娼婦女将・報道官・ゲリラ指導者…移民や多人種との出会いと別れを経て成長する魅力…