MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-07-16 to 1 day

「マクナイーマ」

マリオ=ヂ=アンドラーヂ著ブラジル作家ブラジルの国民的作品現在もブラジルは200の部族がいるアマゾン奥地の”つかみどころのない”伝説の英雄神話世界とはいえ原始的なアマゾンを飛び出した剽軽な英雄サンパウロで近代文明を目にし未開文明視点で独特な分析…

「フリアとシナリオライター」

マリオ=バルガス=リョサ著ノーベル賞ペルー作家“事実は小説よりも奇なり”19歳で10歳年上の義理の叔母と結婚し世界的作家になった著者(現在は離婚し従姉妹と再婚)自伝と天才ラジオ作家の9短編が交互に進行破綻していくコミカルな短編と著者のロマンスの絶妙…

「西暦1000年 グローバリゼーションの誕生」

西暦1000年 グローバル化加速宗教圏と温暖化が安定し交易の時代へ北欧:新大陸発見北米北極圏開発中南米:チョコ貿易中国:泉州・杭州インド:チョーラ朝の交易遠征アフリカ:総資産¥40兆マンサ=ムーサ王中東:奴隷と金の経済圏中央アジア:騎馬遊牧帝国

「イギリス1960年代」

第二次大戦最大の”敗戦国”イギリス植民地と競争力を失う”イギリス病”で若者が新消費層として台頭“Rock’n’roll(性行)”ビート文学麻薬ミニスカボブカットチャタレー裁判ピル普及死刑廃止同性愛合法化訪れる新自由主義“The Beatlesからサッチャーへ”百花繚乱の1…

「ノルウェイの森 下」

村上春樹著心の傷は癒えても罅は元に戻らない元から”変わった子”だったのか?何かを失い”変わった子”になったのか?壊れゆく直子への想いを他所に別の女に射精せざるを得ないワタナベ報われるのが愛報われないのが恋人は脆く何かを愛し何かに恋しなければ生…

「ノルウェイの森 上」

村上春樹著“白夜”北極圏ノルウェイには陽が沈まない1日があるそこでは寒く仄暗い森の中で灯を求めて彷徨うしかない人生も同じだろうか?The Beatles「Norwegian Wood」がBGM幼馴染の恋人を亡くし壊れていく少女彼女に恋しつつも愛しきれない男愛に飢えた喪失…

「犬の心臓/運命の卵」

ミハイル=ブルガーコフ著ソ連作家パステルナークと同様に再評価が進むソ連独裁体制をSFや近未来設定を以て婉曲的に批判“犬の心臓”人間の臓器移植で知能を持った犬の下劣な行為と管理社会の恐怖“運命の卵”博士の発見した増殖光線で動物が異常発生し人と人工…

「スウェーデンボルグ」

スウェーデンの隠れ偉人スウェーデンボルグ王立鉱山局長結晶学開祖デカルト宇宙論・カント理性世界を先取りする哲学力飛行機・動力機の設計し発明する科学力突如覚醒した霊感と予知力神秘と科学を融合する先駆けとなったバルザック・ボルヘス・内村鑑三らに…

「コレラの時代の愛」

ガブリエル=ガルシア=マルケス著ノーベル賞コロンビア作家19世紀コロンビア初恋の女を51年も愛し運河会社で成功するも貞操を保つ男両思いながら経済的理由でコレラ撲滅医師と契る女だが倦怠に苦悩やがて未亡人となり再び結ばれる2人半世紀に及ぶ”コレラの…

「至福のとき」

莫言著中国ノーベル賞作家中短編5集“至福のとき”老境リストラ男が廃バスで売春宿経営“長安街のロバに乗った美女”清楚な美女と汚いロバの混乱劇“宝の地図”法螺喰う者が宝を喰い人喰う“沈園”円明園と珍園のすれ違う男女“飛蝗”蝗害で血染めになる閉鎖的農村と蝗…

「一人称単数」

村上春樹著8短編集やはり音楽に詳しくアメリカ大好き感が強め回想と現在の交錯はリョサっぽい“石のまくらに”“クリーム”“チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ”“ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles”“ヤクルト・スワローズ詩集”“謝肉祭(Carnaval)…

「破壊者ベンの誕生」

ドリス=レッシング著ノーベル賞イギリス作家平和で幸せな夫妻と4人兄弟5人目“破壊者ベンの誕生”胎児期から激しく子宮を蹴り誕生時から悍ましい外見で忌避我が子と思えぬ憎悪に崩壊する家庭不幸は不運の連続主人公ベン以外の視点で語られる様は不気味な一方…

「水いらず」

ジャン=ポール=サルトル著ノーベル賞(唯一の辞退)フランス作家・哲学者肉体嫌忌の”実存主義”短編5集“水いらず”“壁”“部屋”“エロストラート”“一指導者の幼年時代”カミュと同列に語られる事が多いがより直情的に人生の意義を問う物語としての完成度も高く哲学…