MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-07-16 to 1 day

「講談社学術文庫 中国の歴史」全12巻読破記念総書評

中国は文化的共通性が高く日本が最も学ぶべき外国史中国の国際的影響力が増す中で浅い時事本より深い学術研究こそ必須中国史は皇帝=歴史のため政治史はさほど難しくない寧ろ複雑な遊牧民族と中国社会経済史に焦点を当てる非常に充実したシリーズ

「中国の歴史12 日本にとって中国とは何か」

中国テーマ史6講2000年の付き合いながら近くて遠い中国中国は日本の歴史に何を齎したのか?文化歴史地理から見る日中交流史“大自然に立ち向かって”“中国文明論”“中国人の歴史意識”“世界史の中の中国”“中国史の中の日本”“日本にとって中国とは何か”

「中国の歴史11 巨龍の胎動」

現代中国を知るには共産党の歴史が必須“軍事戦略家”毛沢東vs”模範的実務家”鄧小平更に既に両名以上の権力を有する習近平林彪・四人組・朱徳・周恩来・華国鋒・劉少奇・江沢民・胡錦濤“鎌と槌”を捨て”黒猫白猫”を追う独自社会主義へ新型コロナの1年まで分析す…

「世界の指導者図鑑」

世界の指導者欧州トップの半分は女性40代は勿論30代も増加🇦🇹現役大学生(休学中)首相🇱🇷元FIFA最優秀選手首相🇵🇭犯罪者現行銃殺容認大統領🇸🇦王子1000人大家族王🇱🇸15人の妻を持つ国王🇳🇿世界初の産休取得女性首相🇲🇳元格闘家の朝青龍の兄を大臣任命🇨🇦イケメン&マッチョ首相

「二つの伝説」

ヨゼフ=シュクヴォレツキー著チェコ作家クンデラやフラバルと並ぶ反体制作家3中編音楽と文学は戦争の対義語たりうる時に政府に悪用される科学よりも狂気の時代だがジャズがあった“レッドミュージック”“バスサクソフォン”“エメケの伝説”コロナ禍の現日本政府…

「神は死んだ」

ロン=カリー=ジュニア著アメリカ作家“神は死んだ”100年前ニーチェが放った衝撃の一言冒頭スーダンのダルフール紛争で”神が死んだ”後の世界を幻想SF怪奇と様々な短編で描く神の肉を食した犬生命を尊ばず戦争に縺れ込む愚者無神論は秩序の不在多神論で共存で…

「グレート・ギャッツビー」

スコット=フィッツジェラルド著アメリカ作家“人殺し?”“成金?”“高学歴?”噂が尽きない謎の富豪”Great Gatsby”全ては彼女を振り向かせるため偽りと虚勢を貫いて追いかけた1つの愛と夢過去を取り戻せると信じた男は過去に身を滅ぼされた“金ピカ時代”に相応し…

「若き日の哀しみ」

ダニロ=キシュ著ユダヤ系ユーゴスラヴィア(セルビア)作家自伝3部作の1冊戦下の少年淡白だが強く揺さ振る眼差し短く幼い文体で静かな絶望を訴えてくる飢餓で家畜も家も親もペットも捨てた若き日に感じた哀しみを各章連作短編で描くセルビア語を会得した詩人…

「獄中シェイクスピア劇団」

マーガレット=アトウッド著カナダ作家部下に左遷された舞台監督囚人更生の一環で魅力的な囚人と女優を加え「テンペスト」上演を受託12年後カナダ民族遺産大臣に出世した部下を前に”復讐劇”の機会が到来スラングやラップを交え”獄中俳優と左遷監督”の逆襲が…

「テンペスト」

ウィリアム=シェイクスピア著イギリス劇作家著者の遺作にして代名詞の復讐劇弟の謀略で絶海の孤島に漂流した元ミラノ国王と娘精霊を従え魔術を修めること12年嵐で弟を島に誘き寄せ復讐劇が始まる娘とナポリ王子の恋現ナポリ王の陰謀泥沼の復讐合戦の末に和…

「アフターダーク」

村上春樹著男女4人“眠れない人々”の夜の1日妖艶なネオン酒と吐瀉物の臭気歓楽街の暗く静かな裏通り逃げる人も病める人も夜の帷は冷たく優しく包みこむなかなかどうして夜は眠らせてくれない明けない夜がないように明けて欲しくない夜もある願わくば”アフター…

「プリンストン大学で文学/政治を語る-バルガス=リョサ特別講義」

マリオ=バルガス=リョサ著ノーベル賞ペルー作家プリンストン大学講義集“文学は戦争の対義語たりえるか?”権力構造と被支配下の市井や抵抗運動を真っ向から描くリョサの創作秘話情報管理独裁社会に向かう現代日本も例外ではない

「小さきものたちの神」

アルンダティ=ロイ著インド作家ブッカー賞受賞処女作“神にも大小がある”ケララ州の缶詰会社経営一族一卵性双生児の兄妹不可触民や寡婦殉死等の悪習を神話・宗教・言語で表現身分違いの恋・女性差別・近親相姦の壮絶な暴力23年後離別した兄妹が再開し真相が…

「隠された悲鳴」

ユニティ=ダウ著ボツワナ作家少女儀礼殺人を巡るサスペンスオカバンゴ伝統社会に根強く残る男尊女卑・家父長制・通過儀礼をミステリタッチで捌く行方不明になり野生動物の犠牲になった少女5年後に血みどろの服と所有物が発見され殺人捜査開始犯人は誰なのか…

「インド-傷ついた文明」

ヴィディアダハル=スラヤプラサド=ナイポール著ノーベル賞トリニダード=トバゴ作家・紀行家自身も印僑のルーツを持つ著者のインド文明論世界最古の豊堯な国土ゆえ3000年も侵略が続いた”従属国家”インド西洋の猿真似は日本以上かつ独創性欠如や後進的なガ…

「ケルトの薄明」

ウィリアム=バトラー=イエイツ著ノーベル賞アイルランド作家・批評家ローマ以前はケルトの時代だが大陸を追われ半島や島国に移住し更にそこでも迫害と朝鮮民族に近い歴史を持つ厨二心を擽る妖精・悪魔・十字架はケルト固有文化一流の語り手でもある著者が…

「図書館の興亡」

“華氏451°”本が燃える温度本は頁に空気が入らず意外と燃えない人類は図書館で知を共有してきた一方で図書館の世界史は夢と破壊の連続だ“本を燃やす者は人も燃やす”-ハイネ(ドイツ詩人)-書店と図書館の激減が叫ばれて久しい実質これは政府が庇護を見捨てた”焚…

「誕生日」

カルロス=フエンテス著メキシコ作家過去現在未来の境界線を取っ払った独特な物語ボルヘス「バベルの図書館」やパムク「黒い本」を想起する深淵な世界東洋的な輪廻転生論かと思いきや西洋的な救世主待望論も垣間見える“誕生日”虫が死んだら山が肥える生物は…

「女が嘘をつくとき」

リュドミラ=ウリツカヤ著ロシア作家連作6短編集男の嘘は虚勢女の嘘は自衛産んでもない娘の話居もしない兄の話詩人ぶる教授居もしない画家の叔父との恋夢でセレブに浸る娼婦全話共通の聞き手の感情移入が見所“女の嘘は許すのが男だ”いえ許しません※男ほぼ登…

「吐き気」

オラシオ=カステジャーノス=モヤ著エルサルバドル作家3中編“フランシスコ=オルメド殺害をめぐる変奏”1殺害事件を複眼で見る社会の闇“過ぎし嵐の苦痛ゆえに”殺人件数世界最大都市の市井“吐き気”自らをベルンハルトに準え吐き気極まる母国を吐き気を催すほ…

「ある一族の物語の終わり」

ナーダシュ=ペーテル著ハンガリー作家20世紀ユダヤ一族3世代の人物達を聖書以来のディアスポラ史とリンク「族長の秋」同様に1段落1章の息つく間もない文体と展開の僅か200Pのサーガ翻弄される民族の宿命が聖書や史人に重なる物語を終わらせず語り継ぐ事で歴…

「絵画について」

ドゥニ=ディドロ著フランス思想家・批評家ダランベールと「百科全書」を共編集し中でも絵画論に明るいヴァザーリ同様に古代(誇大)ギリシア好きで特に彫刻ラオコーン像がお気に入りデッサン・色彩・明暗法・構成で絵画論を分析ロココ全盛期を否定し写実主義…

「狙われたキツネ」

ヘルタ=ミュラー著ノーベル賞ドイツ系ルーマニア作家チャウシェスク独裁〜東欧革命世界中継でクリスマスに公開処刑された首相夫妻即時性は報道に負けるが分析は文学の方が上壁を喰み飢餓に耐えた国民尾行・密告・家宅侵入秘密警察監視社会国外逃亡を自身の…

「ブートバザールの少年探偵」

ディーパ=アーナパーラ著インド作家印パ紛争・カースト・スラム・性差別・貧困・宗教問題友人失踪を機に9歳の少年は相次ぐ子供の失踪事件捜索の探偵へ喧騒のスラムやバザールでインドの闇に直面する中で姉も巻き込まれ、、?インド社会問題を浮き彫りにする…

「崩れゆく絆」

チヌア=アチェベ著ナイジェリア作家再読“アフリカ文学の父”渾身の処女作イボ族の首長オコンクウォは多妻や子に手をあげ別の共同体へ追放眼前にはキリスト教と武器を携え燻る下層階級を扇動する白人に故郷も蝕まれていく西欧植民地化の複雑な過程を部族と白…

ジョゼ=サラマーゴ全7作品読破記念総書評

・歴史物(ほぼポルトガル史)・SF的ディストピア・現代人のアイデンティティ追求「」なし1P1文や代名詞不使用と独特な表現で上記3テーマを捌く各作品でスタイルが違うので新鮮イベリスモ(スペインとポルトガル併合のイベリア半島国家主義)が随所に散見

「時との戦い」

アレホ=カルペンティエール著キューバ作家時に纏わる短編7集逆行する時円環する時交錯する時未来の記憶と過去の予告耽溺の魔術的リアリズム失われた自我を取り戻す”時との戦い”“夜の如くに”“種への旅”“聖ヤコブの道”“選ばれた人びと”“闇夜の祈祷”“逃亡者た…

「ちっちゃな回想録」

ジョゼ=サラマーゴ著ノーベル賞ポルトガル作家「」なし超文や寓意など難解で知られる著者の読み易い自伝ポルトガルの田舎で生まれ育ちサラザール独裁下の転職の果てに作家へ彼の文学エッセンスや作品裏話を物語調で表現サラマーゴは”西洋わさび”の意味本人…

「シルクロード」

ザイデンシュトラーゼ”絹の道”シルクロードドイツ歴史学者リヒトホーフェン命名“月面以上の秘境”西域亀茲楼蘭喀什噶爾敦煌月氏高昌和蘭天山山脈と昆崙山脈に挟まれたタクラマカン砂漠は数多の遊牧帝国や貿易都市が誕生習近平の”一帯一路”政策は2000年前から…

「墓地の書」

サムコ=ターレ著スロヴァキア作家真面目で明るくユーモラスで正義感が強いだからこそ恐ろしい共産制崩壊後もその慣しに従う男を不気味に描く占い師の勧めで知的障害の男は本を書くが次第に進次郎構文並に文章が破綻していく無邪気な差別と狂気の偏見の塊歪…