MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-01-25 to 1 day

「ザ・ロード」

コーマック=マッカーシー著アメリカ作家場所も時代も設定も不明瞭な荒廃世界確かなのは人類が社会が崩壊し誰もが飢餓が蔓延するサバイバル状態にあること父と子は南を目指す子を守るべく心を鬼にする父無垢で世間知らずな優しい子句点と括弧が殆どない文体…

「ジョーカー最大の勝利」

#一日一編11作目ドナルド=バーセルミ著アメリカ作家アメコミの正義漢「バットマン」では英雄補正を外し凡人に変えてみると…?根拠薄弱な対決理由思い上りなダサさあえなくジョーカーに敗北政治家・芸能人・名作etc…知名度ゆえ無条件に礼賛される”俗物”の真…

「テロル」

ヤスミナ=カドラ著アルジェリア作家“テロル”フランス語で恐怖政治転じて暴力行為による威嚇の意品行方正な愛妻は自爆テロ実行犯だった平和で裕福な生活を送るイスラエル帰化マグレブ系ユダヤ人の医者と妻何が妻を変えたのか?何も妻は変わってなかったのか…

「夜の海の旅」

#一日一編10作目ジョン=バース著アメリカ作家人間の脳神経網と宇宙は似ているという宇宙も誰かの脳かもしれないそんな優美な解釈を想起させる短編死後に三途の海を彼岸を目指す海を思わせる世界観“造物主”父に向かう暗い海の旅曖昧な設定を上手く宇宙的広大…

「コズモポリス」

ドン=デリーロ著アメリカ作家近未来NYウォール街28歳にして既に円ドル為替投資で億万長者の青年贅沢な巨大リムジンに女を招き床屋を呼び仮想空間に浸るしかし富裕層狙いの殺人予告と投資失敗が彼の人生を狂わせていく…資本主義の限界と特権階級批判をバーチ…

「朴達の裁判」

#一日一編9作目金達寿著朝鮮系日本作家太平洋戦争後の南朝鮮(韓国)K市反米と反日を掲げて日々を共産主義布教に努める左翼の男市民擁護を訴え逮捕投獄を繰り返し徐々に英雄化弾劾裁判に持ち込むも根拠薄弱で裁けない冷戦特有の個人と国家の間のイデオロギー論…

「眩暈」

エリアス=カネッティ著ノーベル賞ユダヤ系ブルガリア作家1部:世界なき頭脳2部:頭脳なき世界3部:頭脳の中の世界読むほど吐気がするサルトル「嘔吐」同様に読むほど眩暈がする狂気の書書集家の中国学者が家政婦や詐欺者と金銭トラブルで発狂頭脳派世間知らず…

「この世の王国」

アレホ=カルペンティエル著キューバ作家脱奴隷社会+ハイチ独立史を擬獣化や神話化で描くマジックリアリズム最も有名な独立指導者トゥサン=ルヴェルチュール以外の偉人が全登壇無文字文化の現地人は絶滅したが土着の呪術的伝統と西洋文化が融合したブードゥ…

「フランス組曲」

イレーヌ=ネミロフスキー著ウクライナ出身ユダヤ系フランス作家著者が執筆途中ナチ党に逮捕された60年後に3/5章が未完状態で発刊第二次大戦ナチ制圧下フランス版「戦争と平和」敵味方・年齢性別・階級を問わぬ個々の兵士や住民の喜怒哀楽戦争の残虐性と荒廃…

「私がもらった文学賞」

トーマス=ベルンハルト著オーストリア作家著者が国内中心に受賞した9つの文学賞受賞時の感想をぶっちゃけ“カントメダルを受賞したとて自著と根拠薄弱にカントを紐付ける等バカらしい”皮肉と風刺の作家だけに巻末の受賞コメント一覧と比較すると本音と建前の…

「最後の恋人」

残雪著中国作家蟷螂の死骸の栞=カフカ「変身」の虫?流血のゴム農園=赤いゴム政策?orブラジルやマレーシアの搾取産業?”何かの寓話だが何の寓話かは曖昧な独自の不条理世界”サラリーマン社会と若干の幻想服飾会社の本好き営業課長と愉快な身内話複数視点で…

「呪い卵」

#一日一編8作目チヌア=アチェベ著ナイジェリア作家文字がなく口承文化のみのニジェール川流域農村伝統社会において市場は最先端の井戸端会議所では突然の疫病流行で誰もいなくなり閑散とした様子を誰が記録するのか?折しもキリスト教に帰依した少数派現地…

「太平洋の防波堤」

マルグリット=デュラス著フランス領インドシナ出身フランス作家半自伝植民地ドリームを追いカンボジア移住した白人一家しかし役人に騙され破産し現地富裕層の婿入りに縋る母抵抗し脱出を試みる娘と弟植民地下階級の描写が上手い白人優越主義と共に決壊する”…

「小さな黒い箱」

#一日一編7作目フィリップ=キンドレッド=ディック著アメリカ作家“パンドラの箱から災厄が飛び出した後に小さな希望が残るという”ディストピア世界カルト教祖が台頭し対抗策に”禅思想”に通ずる諜報員が陰謀阻止を目論む教祖の話だが現代では主役を変えれば…