MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2022-12-02 to 1 day

「首相が撃たれた日に」

ウズィ=ヴァイル著イスラエル作家19短編集パレスチナとイスラエル似て非なる両地を若者を中心に多彩な切り口で迫る“精一杯に生きる首相”“生きることに精一杯な庶民”撃たれることは日常茶飯事それでも重みの違う命そして日本と違って戦中でも高度成長してる…

ジャン=マリ=ギュスターヴ=ル=クレジオ全42冊読破記念総書評

歴代ノーベル賞作家で最も国際派詩的で官能的な文章西欧文明の”支配意識”批判自然と光彩に満ちた旅と冒険芸術と音楽の悦楽に浸る逃亡多作で多様で高水準な小説・エッセイ・学術論文世界の車窓から“文学で地球一周”を楽しめる作家 以下個人的ランキング 1.「…

ジョン=マクスウェル=クッツェー全21冊読破記念総書評

古典のリライトは難しいそれをほぼ全長編で行い且つ成功させている西欧的価値中心社会の欺瞞を異端者側から巧みに批評し最近は”南半球の文学”も提唱寓意・実験・倫理・言語学…その硬派な文体で人間の心の最も柔らかい部分を切り裂いていく 以下個人的ランキ…

「FOE」

ジョン=マクスウェル=クッツェー著ノーベル賞南アフリカ作家「ロビンソン・クルーソー」をディストピア化しリライト著者(デ)フォーは敵フライデーは舌なし去勢者クルーソー死後言語遊びも含め初期作で既に英語で以て英語を批判(恐らく)原作と逆に第三世界→…

「向こう側への旅」

ジャン=マリ=ギュスターヴ=ル=クレジオ著ノーベル賞フランス作家2短編1長編“ワタセニア”海を擬人化した作品“ナジャ・ナジャ”詩的で官能的な言葉の大人版「星の王子さま」煙草を喫む蛇身の不良少女の世界を巡る旅“パシャカマック”アステカ文明の反近代性…

フランツ=カフカ全6冊読破記念総書評

正直カフカは苦手現実逃避したくて読書していても現実より悪夢に思えてくるそれでも世界文学史上で後世に最も影響を与えた作家であることは否めない・生前は無名・一般の保険業者・家庭で虐待・常に絶望・全長編が未完・ユダヤ系不条理を訴えた初の作家 以下…

「城」

フランツ=カフカ著ユダヤ系チェコ作家測量士ヨーゼフ・Kはとある僻村の”城”に呼ばれるしかし一向に仕事は始まらず依頼人も現れず村に滞在しても異邦人として誰もが冷たく遇らう足掻いても這い上がれない砂地獄は”社会の歯車”の声を代弁する現代マイノリティ…

「絶望名人カフカの人生論」

フランツ=カフカ著ユダヤ系チェコ作家恋人の手紙や手稿の言葉を集めた人生論生前は全く注目されず自身も文学で食えると思っていなかったカフカ仕事は出来たが大嫌い片想い家族と不和ブロート以外コネなし必然的絶望の中で未完長編の不条理文学に行き着く

ジェローム=デビッド=サリンジャー全6冊読破記念総書評

第一次大戦まで”女性”の第二次大戦まで”若者”の“購買層”は共に世界中で存在しなかった若者帰還兵の閉塞感を描き”逃げる若者擁護のバイブル”の象徴ロックもヒッピーもこの時代に生まれた以後”若者”は流行の最先端を形成する”購買層”となる 以下は個人的ランキ…

「フラニーとズーイ」

ジェローム=デビッド=サリンジャー著アメリカ作家2中編アメリカ社会の若者の声を叫ぶグラース家サーガを兄妹2人から描く“フラニー”才色兼備の女子大生の妹しかし東洋宗教に嵌り少々カルト昏迷気味に“ズーイ”現実逃避気味の俳優の兄片や自閉気味の妹を説得…

「大工よ 屋根の梁を高く上げよ/シーモアー序章ー」

ジェローム=デビッド=サリンジャー著アメリカ作家2中編“大工よ 屋根の梁を高く上げよ”軍から漸く外出許可を得て来た妹の結婚式のドタバタ劇“シーモアー序章ー”グラース家サイドストーリー詩人として葛藤し自殺した一家の天才長男の死後回顧

マリオ=バルガス=リョサ全29冊(追)読破記念総書評

文学は権力の対義語たりえるか?最年少40歳で国際ペンクラブ会長ペルー大統領候補経験官能・政治・芸術・風刺・歴史・推理と多様な作風1文単位の時空間操作複数人物視点卓抜な批評世界を飛び回る魅力的なキャラリアリズムの巨大建築的小説群 以下は個人的ラ…