MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2022-11-30 to 1 day

「果てしなき饗宴」

マリオ=バルガス=リョサ著ノーベル賞ペルー作家現代小説の祖ギュスターヴ・フローベールその代表作「ボヴァリー夫人」を中心に読み解く“自由間接話法”“全知の語り手”“信頼できない語り手”著者自身も多用する技法や派生の”意識の流れ”にも言及始発点なる“果…

サルマン=ラシュディ全9冊読破記念総書評

パキスタンの親を持ちムスリムとしてボンベイに生まれロンドンへ渡りインドを描き「悪魔の詩」でイラン最高指導者ホメイニが死刑宣告を出す膨大な歴史・宗教・神話の知識を用いて卓抜な想像力で現代史とリンクさせるマジックリアリズム最もインド的な作家だ …

「恥」

サルマン=ラシュディ著インド作家“清浄の5大民族国家”パキスタン僻村で因習的・性的・イスラーム的な”恥”を学ばず成長する少年オマル・カイヤーム(中世イラン詩人)父は不明母は”3人の魔女(三位一体)”三姉妹ドンファン的成功に溺れるオマル現代パキスタンの”…

「スペインの家」

ジョン=マクスウェル=クッツェー著ノーベル賞南アフリカ作家3短編集“スペインの家”家と結婚する現代人を描く“ニートフェルローレン”牧歌的生活下で文学に覚醒する南ア少年期を回顧“彼とその従者”「ロビンソン・クルーソー」と自身の半生を寓意化したノーベ…

「純白の夜」

三島由紀夫著エリート銀行員の夫その妻学生時代の夫の学友三角関係W不倫の純愛スキャンダルプライドの高い者同士が仕掛ける緻密な心理戦“純白”という皮肉で逆説的なタイトルが良いありきたりのメロドラマ的設定だがやはり華麗な文体とテンポ良い逢瀬の密会が…

「新恋愛講座」

三島由紀夫著3エッセイ“新恋愛講座”“終わりの美学”“若きサムライのために”連載誌には軽めな恋愛小説を多く執筆緻密な自著の心理小説と同じく実際の恋愛観察眼も巧み物事のオチに注目した”終わりの美学”フェミニズムの功罪も既に予告いつも通り西洋と日本の二…

ウィリアム=フォークナー全12冊読破記念総書評

<ノーベル賞受賞理由>“現代アメリカ小説への独創的な貢献”その深淵な世界は選考者すら定義不可で曖昧な評価にせざるを得ない程神話性写実性暴力性宗教性自伝性因習性南部ヨクナパトーファ群を舞台に”意識の流れ”で複雑かつ緻密な人物と世界を構築 以下個人的…

「ガルシア=マルケス論ー神殺しの物語」

マリオ=バルガス=リョサ著ノーベル賞ペルー作家2段組500P若き巨匠が紐解く世界初の学者顔負けマルケス論「百年の孤独」までの全登場人物と構造を網羅し完全解説反復・誇張・主体跳躍・客観的現実・幻想的現実・隠喩・ユーモア著者自身も自作に応用した X=…

「兵士の報酬」

ウィリアム=フォークナー著ノーベル賞アメリカ作家ヨクナパトーファサーガ始まりの処女長編映画「ジョニーは戦場へ行った」的内容戦死と思っていた恋人が心身共に欠損した姿で帰還将来不安から親族と町中に結婚を反対され絶望する女恋人たち以外に様々な人…

「美と共同体と東大闘争」

三島由紀夫著“近代ゴリラ”三島由紀夫vs”安田講堂学徒”東大全共闘現在の大学では絶対に有り得ない死をも覚悟した一触即発の討論会(意外とお茶目)「テレーズ・デスケルウ」論ルソー自然論天皇制と共同体美とエロティシズム“暴力の否定”の否定三島の見た自民党…

「死の床に横たわりて」

ウィリアム=フォークナー著ノーベル賞アメリカ作家10人前後が交代独白(全員変人)亡き妻を弔うため遺体を運ぶ男大家族の狂人的親族と絡みながら道中を馬車で征く南部の殺伐な原風景を描くブラックコメディ意識の流れが複雑だがまさかの秀逸なオチが最後の文…

アミタヴ=ゴーシュ全4冊読破記念総書評

科学と地理歴史を中心にした博識豊かで独特な感性大衆的個人が主役ながら世界史の双方に真摯に向き合う稀有な作家エジプトやビルマと母国インドに留まらないノスタルジーを謳う社会文化面から植民地支配を弾劾する作家は多いが科学環境面からの検証者は貴重 …