MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2022-10-02 to 1 day

「聖女伝説」

多和田葉子著ドイツ・日本作家1中編1短編集表意文字の日本語と表音文字の外国語(主に欧米語派)の語幹・五感・互換を駆使“聖女伝説”“ケとハレ”に選ばれ聖人出産を運命付けられた女逆説的な”聖→俗”への賛美と聖女の救済“声のおとずれ”表題作の派生的作品少女の…

「ここから世界が始まる」

トルーマン=カポーティ著アメリカ作家解説:村上春樹14短編集“8歳で作家になった”と豪語する著者の始まりを告げる初期作を収録少年少女の年齢と知性に沿う巧みな心理描写と表現流麗な文章だが奥深く繊細似た作品が多いが飽きさせず寧ろ次章に行くにつれ期待…

ロベルト=ボラーニョ全11冊読破記念総書評

中南米を俯瞰した壮大な詩的NFを繰り出す詩人崩れの皮肉屋チリ軍政の経験が産む陰鬱で暴力に満ちた小説世界半自伝の色濃い虚実混淆の”新基軸ポストコロニアル”は時代と権力に翻弄される喪失者を精密に描写特に遺作「2666」と大作「野生の探偵たち」は圧巻 以…

「アメリカ大陸のナチ文学」

ロベルト=ボラーニョ著チリ作家・詩人総勢30名の架空作家の架空書評と実在作家の実在書評が混淆した”極右作家列伝”第二次大戦の戦場でない中南米は敵愾心がなく反米で迎合アイヒマン等ナチ残党の亡命も続出終章は「はるかな星」原型架空だと忘れる程の豊か…

「ムッシュー・パン」

ロベルト=ボラーニョ著チリ作家・詩人ペルー前衛詩人バジェホがモデル元大戦傷病兵の催眠術士パンに瀕死の男の吃逆治療の依頼が届くパンは男の美人若妻に恋慕するが…?一方ナチ台頭期パリを暗雲が包んでいく不気味な水槽ジオラマや迷宮倉庫や診療所はノワー…

「鼻持ちならないガウチョ」

ロベルト=ボラーニョ著チリ作家・詩人7短編集“ジム”“鼻持ちならないガウチョ”“鼠警察”“アルバロ・ルーセロットの旅”“2つのカトリックの物語”“文学+病気=病気”“クトゥルフ神話”ボルヘスとカフカの模倣作マルケスとリョサの痛烈批判現代版騎士道物語のガウチョ

「通話」

ロベルト=ボラーニョ著チリ作家・詩人14短編集著者の放浪詩人ぶりが伺える妙作バシッと狐に摘まれる種類のサリンジャー的良作サリンジャー曰く”詩人は発明者ではなく発見者でなければならない”日常の最低限の声を題にする点は詩人らしい一方できちんと起承…

「第三帝国」

ロベルト=ボラーニョ著チリ作家・詩人スペイン南部カタルーニャ地方の秋のビーチ戦争ボードゲーム”第三帝国”王者が暇潰し相手だったはずの”火傷”しかし図書館で学び実際にゲームも勝ち越していく”火傷”とは対照的に王者は徐々に精神崩壊が進む現実と虚構の…

「チリ夜想曲」

ロベルト=ボラーニョ著チリ作家・詩人著者の分身=カトリック司教が延々に淡々とチリの政治・詩・文学の持論を述べる基幹産業国営化を目指したアジェンデ圧迫軍政のピノチェト国民的詩人ネルーダどれも客観的かつ冷静に分析し独白(もはや司教感0笑)暗黒時代…