MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2022-09-15 to 1 day

「愛する大地(Terra Amata)」

ジャン=マリ=ギュスターヴ=ル=クレジオ著ノーベル賞フランス作家“大地に生きている”“大地に生かされている”手話・モールス信号・意識の流れを言語化した実験小説聴覚的リズム+視覚的エクリチュール=知覚的ヌーヴォーロマン誕生から埋葬まで大地が育む生…

「フィリッポ/サウル」

ヴィットーリオ=アルフィエーリ著サルデーニャ王国貴族・劇作家2中編“フィリッポ”カトー・カンブレジ条約前後のスペイン王家王子の父王暗殺計画と王妃の群像劇“サウル”神の命令に叛き寵愛を失うイスラエル王サウルゴリアテ討伐で名声を博すダビデ王子権力禅…

「彼女の思い出/逆さまの森」

ジェローム=デビッド=サリンジャー著アメリカ作家8短編1中編集世界大戦を経験したロスジェネ代表作家サリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」で有名だが短編の方がキレ味も抜群で上手い軍人・難民・移民・戦争・亡命…行き場を失った若者の想いと悲哀を優しく…

「負債と報い」

マーガレット=アトウッド著カナダ作家「嵐が丘」から「グレートギャッツビー」まで恋愛以上に”負債と報い”が主題ディケンズ「クリスマス・キャロル」のスクルージ(screw=搾取)卓抜した博識で社会的動物たる人類の経済搾取問題の功罪を暴く作家の見るリーマ…

「トマス・ピンチョン」

現代アメリカ文学の百科全書的作家ピンチョン論考戦争・帝国・支配・植民地・テロ・対抗文化麻薬・核兵器・諜報・陰謀論・移民・国民国家現代が抱える矛盾と欺瞞を世界各国を舞台に展開し”選びに与れない者たち”へ普遍性を説く異端者による異端者のための異…

「アイダホ」

エミリー=ラスコヴィッチ著アメリカ作家妻が実の娘を殺し終身刑に夫は再婚するが健忘症へ娘の妹は事件目撃の衝撃で失踪40年かけて離散した家族の記憶を拾い集めてゆく再婚後の妻を待つ結末とは…?交錯する時間軸と交替する家族の心理描写のパズルアイダホの…

「セロトニン」

ミシェル=ウェルベック著フランス作家世界的農薬企業退社後の中年社員エリート街道を歩み”社会に必要な人間”を自認していたが日本人の恋人蒸発で存在意義を消失過去の交際女性を浮かべては愚痴る様は現代の孤独とグローバル資本主義の弊害なのか?予言的中…