MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2022-08-13 to 1 day

「約束された移動」

小川洋子著6短編集未来の偶然も過去になれば必然となるその時に何を忘れて留めて残して覚えて捨てて得ているのか?移動する人の小さな運命を描く“約束された移動”“ダイアナとバーバラ”“元迷子係の黒目”“寄生”“黒子羊はどこへ”“巨人の接待”個人的には”寄生”が…

「穴あきエフの初恋祭り」

多和田葉子著ドイツ・日本作家7短編集言葉は無意識に使う極めて意識的な概念“穴はキエフの祭”こんな言葉遊びが楽しくて斬新で衝撃的“胡蝶カリフォルニアに舞う”“文通”“鼻の虫”“ミス転換の不思議な赤”“穴あきエフの初恋祭り”“てんてんはんそく”“おと・どけ・…

「わたしは女の子だから」

7短編集角田光代訳・編英語圏作家アンソロジーウガンダトーゴナイジェリアカンボジアブラジルドミニカ売春・虐待・割礼・教育剥奪・家事強制…発展途上国の”女の子”は未だに”女の子だから”という理由で不当な扱いを受けている彼女達の実情を描いた女性作家の…

「毛皮を着たヴィーナス」

レオポルト=フォン=ザッハー=マゾッホ著ウクライナ出身オーストリア作家“貴女の奴隷になりたい!”マソヒズムの語源となった著者のドM女王様プレイ体験記三島や谷崎の文学観にも通じる性癖分析の書尻に敷かれると見せかけて徐々に主導権を握るのは男という…

「優しい地獄」

イリナ=グリゴレ著日本在住ルーマニア作家・日本伝統舞踊研究者著者の半自伝エッセイチャウシェスク時代に生まれ川端康成「雪国」に魅せられて日本語を学んだ著者以後は青森や東京とルーマニアを行き来し社会主義国家との文化・歴史・価値観の違いを自伝を…

「無垢の博物館 下」

オルハン=パムク著 ノーベル賞トルコ作家不倫への背徳感と受験失敗の絶望から失踪した娘妻も仕事も家族も友人も失い彼女を探し続ける男漸く再会を果たすが女優を目指し映画業界人の恋人を連れていた…西洋式の”俗の愛”トルコ伝統の”聖の愛”想い出は棚に並べ…

「無垢の博物館 上」

オルハン=パムク著ノーベル賞トルコ作家再読“人生とは垢抜ける事の無い収集物の博物館だ”2008年 本書刊行2012年 イスタンブール市チュクルジュマ地区に”無垢の博物館”開館名家美女との結婚を控え仕事も私生活も約束されていた男18歳の遠戚の美女との再会破…

「石蹴り遊び」

フリオ=コルタサル著アルゼンチン作家”石蹴り遊び”の様に章読了後に指定ページへ移動を繰り返す実験的作風2通りの読み方がある”2都物語”パリ:ラ・ボエーム的な芸術サロンブエノスアイレス(南米のパリ):現代作家の苦悩トラベラー:両世界に登場するパイプ役2…

「パワーポリティクス」

マーガレット=アトウッド著カナダ作家処女作「サークルゲーム」と対をなす45詩編“わたし”=支配(男性的)“あなた”=被支配(女性的)力とは権力権力とは男性が支配するもの政治とは蹂躙蹂躙とは女性が支配されることパワーポリティクスを巡る二律背反をジンテー…

「セカンドハンドの時代」

スヴェトラーナ=アレクシェーヴィッチ著ノーベル賞ベラルーシ作家1991年 超大国ソ連自壊ロシアと旧ソ連圏は政治経済の新モデルを築けず全てが2番煎じの”セカンドハンドの時代”に突入実体験ゆえ歴史書以上の説得力と現実味がある“赤い国”を生きた数多の庶民…

「その丘が黄金ならば」

C=パム=ジャン著中国系アメリカ作家ブッカー賞候補作ゴールドラッシュ後カリフォルニア母と父と共に家も喪い放浪する華僑(苦力)の幼い姉弟亡骸を葬ろうとする旅路で降り掛かる災難“大陸横断鉄道はお茶とウィスキーで建設された”中国系移民の知られざる”西…

「仮面の陰に あるいは女の力」

ルイザ=メイ=オルコット著イギリス作家「若草物語」で有名な著者の意外なサスペンス小説美貌と機知で雇われ先の屋敷の人間を次々と魅了する“femme fatale”的美女家庭教師テンポ良い会話と巧みな心理・行動描写で一気読みストーリー自体が面白いダークスリ…