MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2022-03-30 to 1 day

「スッタニパータ」

ゴータマ=シッダールタ(&弟子)著シャーキャ王国(古代インド)思想家・仏教開祖釈迦の人生を名言と共に辿る論理学的三段論法の説法煩悩抑制と不殺生の徹底併せて非常に読み易い紀元前450年35歳で解脱し80歳で入滅当時のカースト制度下で”人は出自でなく行為”…

「慈悲の心のかけらもない」

シビル=カティガス著マレーシア作家“大東亜共栄圏”を謳い太平洋・東南アジアに侵攻した大日本帝国抗日ゲリラに手を貸したインド系マレー人医の妻で看護師のシビル“慈悲の心のかけらもない”拷問・強姦・皇民化政策イギリスに勲章を授与され現イポー市の通り…

「スザナ・ムーディーの日記」

マーガレット=アトウッド著カナダ作家3部詩集元々「サークルゲーム」でカナダ総督賞を受賞し詩人として文壇に登場した著者カナダ移住開始期の作家スザナ・ムーディーの自然と人間の平易で雄大な詩タゴール同様に心情中心の欧米詩人と違い広大なカナダの自然…

「ある青春」

パトリック=モディアノ著ノーベル賞フランス作家幸せな家庭を気づいた今15年を経て思い返す戦後パリ…歌手志望の少女兵役後の孤児青年生き抜くため身を偽り物騒な仕事の傍ら夢を追う出逢って恋した2人失って流れた日々当て所なく彷徨う大都会郷愁と憧憬の断…

「大使閣下」

エリコ=ヴェリッシモ著ブラジル作家カリブ架空国家サクラメント共和国独裁政権を打倒した英雄が独裁を始める悪夢反共と利権誘導で米国の顔を伺うためワシントンD.C.に派遣された”大使閣下”愉悦に浸る2人の”元英雄”革命〜独裁〜ゲリラ〜失脚と国家崩壊の軌跡…

「フィクションのエルドラード」シリーズ全29冊読破記念総書評

“文学のエルドラード(黄金郷)”魔術的リアリズムの古典から名声高まる最新作まで中南米文学の殿堂入り作品大集合名翻訳者(スペイン語)の寺尾隆吉が総監修を務め水声社の装帳も美しい最高のレーベル初訳から新訳まで値段に恥じぬ傑作揃い

「英国屋敷の二通の遺書」

R=V=ラーム著インド作家珍しくミステリを読むインド感を期待したが寧ろイギリス感が勝る遺産狙いの暗殺防止で”2通の遺書”を書くチェンナイ富豪当主“closed circle”下の連続殺人事件の背後には闇を衒う巨大な陰謀が渦巻いていた探偵は謎を解き陰謀を止めら…

「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド 下」

村上春樹著迫り来る”世界の終わり”壊れ行く”ハードボイルド・ワンダーランド”地下鉄に乗り地下世界に潜り壁と門番を過ぎ深層心理の扉を開く“シャフリング”と”ブレインウォッシュ”の果て”俺と私”を待つ結末とは…?組織と工場の夢読みの旅路

「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド 上」

村上春樹著奇数章:世界の終わり偶数章:ハードボイルド・ワンダーランド2つの時空間を繋ぐ鍵は影・老科学者・一角獣の頭蓋骨・夢・計算士…“組織”の目的とは?SFでもファンタジーでも推理小説でもある独特な世界光陰が交錯する不思議な冒険

「燃やされた現ナマ」

リカルド=ピグリア著アルゼンチン作家1965年 ブエノスアイレス銀行強盗事件莫大な紙幣を攫って犯人4人はアパートに逃げ警察と籠城戦へ追い詰められ”燃やされた現ナマ”をバラ撒き警察を嘲笑うが…?犯人の過去を走馬灯させ警察・記者・作者と多声的に語るハー…

「おしりに口づけを」

エペリ=ハウオファ著トンガ作家オセアニア文化を交えた滑稽で痛快な”肛門文学”(しかも岩波)島国の元ボクシング王者はある日オナラが止まらなくなった!放屁で義母が飛び大地が揺れ爆音が轟き痔に悩み排便が続く妻・外科医・移民との確執の果て”おしりに口づ…

「ヘリオガバルス あるいは戴冠せるアナーキスト」

アントナン=アルトー著フランス演出家・俳優・評論家ローマ帝国23代皇帝”14歳の奇行帝”ヘリオガバルス男根の大きさで大臣を選び薔薇の風呂で乱交を強制する父カラカラ帝や母国シリア時代に遡り恐怖政治を行う性的倒錯無政府主義者の本質に迫る