MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2022-02-02 to 1 day

「文豪ナビ 三島由紀夫」

三島祭1作目!先に形から入る…笑小説家が政治家並みに社会を左右する力を持っていた時代の頂点“三島由紀夫”本名:平岡公威要約版の代表作を3作品収録時代に先行しすぎた作家は自殺が多い45年の壮絶な人生自体が芸術的で完璧個人的に段落と言葉とリズムが完璧…

「年月日」

閻連科著中国作家経済成長以前の中国 「老人と海」+「黄色い雨」+「ゴドーを待ちながら」 孤独と老いとの戦い旱魃で村人全員が逃避した村草木枯れ果て残された1本の玉蜀黍のある小さな池に屯する盲犬と老人鼠や蛆を喰らい飢餓と狼の群れに孤独に立ち向かう …

「エクソフォニー」

多和田葉子著日本・ドイツ作家日独バイリンガル作家として近年ノーベル賞候補の著者が言語音声と文学の関連性を分析Exo(外)phony(声)tele(遠)vision(景色)でも”テレビ”で区切る違和感語学贅沢化の日本への警鐘世界各地の講演やイベントで感じた”母語と外国語…

「ブッチャーボーイ」

パトリック=マッケイブ著アイルランド作家ブッカー賞最終候補過激版「ライ麦畑でつかまえて」 肉屋の小僧ありがとう豚野郎め愛してる殺す大好きだ母さんを病院送りにしやがって気持ち悪いなお前は泣くな豚通行税を取る糞が夢かお前は父ではない恋だこの馬鹿…

「青と緑」

ヴァージニア=ウルフ著イギリス作家22短編集背景や情景を思いのまま書き連ねる”意識の流れ”光と影のコントラストの駆使ホラー・ファンタジー・詩・ミステリなど多彩で全て濃密ドッペルゲンガー的描写はフェミニストの先駆けを背負い果てに自殺した著者の狂…

「帝国の動向」

フェルナンド=デル=パソ著メキシコ作家これぞ世界文学これぞ歴史小説1850-1927年870Pに及ぶ”帝国主義国家の動向”奇数章:マクシミリアン銃殺後に発狂した皇妃シャルロッテの独白偶数章:メキシコ近現代+ハプスブルク家+列強の世界分割史と裏の駆け引き+マク…

「アブサロム アブサロム!下」

ウィリアム=フォークナー著ノーベル賞アメリカ作家“汝ダビデの子アブサロム!”裏切りと復讐と近親相姦サトペン家コールフィールド家黒人の血を拒む白人の傲慢が招く栄枯盛衰回想と現実が交互に展開し徐々に一族の秘密と破滅の過程が明かされる過去作キャラ…

「アブサロム アブサロム!上」

ウィリアム=フォークナー著ノーベル賞アメリカ作家ヨクナパトーファサーガ最古&最長の物語1807 黒人農場繁栄で成金となる白人地主サトペン家1856 南北戦争従軍と奴隷解放1909 没落の真相に迫る末裔混血の黒人純血の白人近親相姦と復讐限りなく神話に近い伝承

「アフリカ文学講義」

アラン=マバンク著コンゴ共和国作家かつて口承文学中心だったアフリカも今やアジア以上のノーベル賞受賞者を輩出クッツェーなど最近は西欧批判と異なる固有の挑戦的作品も誕生特に旧仏領植民地の文学に詳しい国際語の仏語を逆に利用して文壇に現れ”国民文学…

「リビアの小さな赤い実」

ヒシャーム=マタール著リビア作家カダフィ独裁下男尊女卑の密告社会酸いも甘いも宿さない”小さな赤い実”早婚早産に発狂する母リンチに遭う父処刑に熱狂する民衆愛憎入り乱れる友達灼熱の砂漠の容赦ない弾圧祖国からの旅立ち9歳の瑞々しい視点と感性で語る半…

「サンクチュアリ」

ウィリアム=フォークナー著ノーベル賞アメリカ作家ヨクナパトーファサーガ一角禁酒法時代殺人と女学生強姦を犯した密造業者復讐を恐れ冤罪を認める男とその撤回に奮闘する弁護士拉致され娼街で発狂する娘“聖域”を外れた各人の”7つの大罪”を余さず描く悪夢の…

「闘争領域の拡大」

ミシェル=ウェルベック著フランス作家闘争領域自由主義化…闘争領域の拡大貧富の格差…闘争領域の拡大醜女と醜男…闘争領域の拡大精子と高慢…闘争領域の拡大若さと老い…闘争領域の拡大彼岸と此岸…闘争領域の拡大選択と争奪…闘争領域の拡大 ……… “闘争領域の拡大”

「理想の夫」

オスカー=ワイルド著アイルランド作家英国風ジョークの利いたテンポ良い喜劇高潔な政治家の”理想の夫”しかし不本意に関わったインサイダー取引の過去を社交界の美女が強請る真実を知った正義感の強い妻高飛車な政治家の友人保守的な父それぞれの選択の果て…

「ぼくは書きたいのに出てくるのは泡ばかり」

ペドロ=シモセ=ナカムラ著日系ボリビア詩人現代ラテンアメリカ文学界で最高峰の詩人詩は膨れては割れる泡沫の言葉敗戦国移民として南米で迫害された日系人の政治と祖国への想い「君主論」や独裁への反体制を言の葉に込め吟ずる淡い幻想泡い気持ち

「素晴らしきソリボ」

パトリック=シャモワゾー著フランス領マルティニーク作家“偉大なるソリボ”が言葉に喉を掻き裂かれて死んだその人生をクレオール語の音声翻訳した言語実験小説島の文化・歴史・自然である”ソリボの死”はクッツェー同様”文学のグローカル化”を暗喩口承文学喪…

「君の声が聞こえない」

葉方萌生(はかためい)著フォロワーさん@rii_185515 出版の電子書籍限定小説高校時代の自慢の元カノ夏音に偶然再会した友一復縁を持ち掛ける彼女だが…?現在と過去の交錯で徐々に明かされる事実と意外な結末淡い青春と暗い過去著者の優しい眼差しが伝わる素敵…

「冬牧場」

李娟著中国(新疆ウイグル自治区)作家世界最内陸地”新疆ウイグル自治区”に住むカザフ族に密着した紀行エッセイ著者自身も新疆出身半年間−30°が続く”冬牧場”しかし中国政府は遊牧民定住化を唱え文化は失われつつある家畜やイスラム市場との温かい交流将来に残…