MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-11-17 to 1 day

「ドストエフスキーとの旅」

生誕200年光文社古典新訳文庫でドストエフスキー翻訳を手掛ける亀山郁夫が”盟友”を肴に人生を語る重厚で抉るような人間描写と予言的かつ破滅的な5大長編9.11同時多発テロ中華帝国の野望「悪霊」の知識層別階級闘争AI破滅論むしろ予言は今をこそ最も的確に捉…

「フロイト 性と愛について語る」

ジークムント=フロイト著オーストリア心理学者・精神科医6論文集・去勢コンプレックス・処女性とタブー・オイディプスコンプレックス・同性愛トラウマ・解剖学的性差・現代人の神経質症欲望=性欲(リビドー)と考えた著者理性-意識-無意識-夢の本質に迫る

「赤い魚の夫婦」

グアダルーペ=ネッテル著メキシコ作家5短編集人もまた”生物”生物と人間の運命的シンクロを描く“赤い魚の夫婦”水槽の闘魚&育児に悩む夫婦“ゴミ箱の中の戦争”ゴキブリvs昆虫食一家“牝猫”女学生vs差別&牝猫“菌類”バイオリニスト&菌類増殖“北京の蛇”華僑老人の…

「レキシントンの幽霊」

村上春樹著短編7集人間の内面を映すあり得そうでない少しホラーで情景描写が巧み“レキシントンの幽霊”“緑色の獣”“沈黙”“氷男”“トニー滝谷”“七番目の男”“めくらやなぎと眠る女”個人的には器用で八方美人な人間が持つ悍ましさと復讐心・猜疑心を鋭く描く“沈黙”…

「サーカスが通る」

パトリック=モディアノ著ノーベル賞フランス作家戦後パリ五月革命身売りする女性が後を立たない時代大戦の傷跡を負いながら一進後退する記憶年上女性との出会いはローマ逃避行への片道切符10年の時を経て少年が警察官に語る女の真実とは?サーカスは気付け…

「デトロイト美術館の奇跡」

原田マハ著デトロイト美術館所蔵<セザンヌ「画家の夫人」>を巡る実話かつてのミシガン自動車産業都市も今や廃墟ゴーギャン・ゴッホ・セザンヌ…市の破綻宣言を受け莫大な価値を持つコレクションと職員を手放す危機へ市民と美術愛好家の美術館への想いが”奇跡”…

「アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること」

ネイサン=イングライダー著ユダヤ系アメリカ作家8短編集ユダヤ文学の多くがヒトラーやナチを題材にするしかし勿論それだけがユダヤ人の全てではない作中の”逆ポグロムごっこ”には戦慄した2世3世の視点で中東戦争やショアーを見つめ直す 収録作“アンネ・フラ…

「歩道橋の魔術師」

呉明益著台湾作家連作10短編集妖しいネオン子供の店番喧騒な売り込み小さな恋高層ビルなき時代今は亡き高度経済成長期の台北デパート”中華商場”歩道橋の貧相な手品師が披露する”魔術”2つの共通項が少年時代の怪奇体験をノスタルジックに想起させる台湾マジッ…

「テヘランでロリータを読む」

アーザル=ナフィーシー著イラン作家“元親米国家”イランは宗教革命で反欧米化・女性の社会進出後退英米文学の女性教授は女生徒7人と”禁書”西洋古典の地下読者会を開催ナボコフ→ギャッツビー→ジェイムズ→オースティン文学解釈と激動の現代イランを個人視点で…

「J・M・クッツェーの真実」

南ア&現代英語圏最高峰の作家”日本初のクッツェー論”数学的ロジック+文学的博覧+簡潔な文体+暴力+多言語英語圏で売れなければ世界文学として認められない従来の”世界文学≠北半球”を否定し”南半球文学”を提唱私も将来”クッツェーの孫達”が世界を席巻すると予…

「最後の物たちの国で」

ポール=オースター著アメリカ作家“パンドラの箱”開くと絶望が訪れる有名なギリシア神話だが箱の底には希望があるという人は希望と絶望どちらを感じて生きるのか?貧困から犯罪と破壊が横行する社会読まれることのない手紙を書き連ねる少女“最後の物たちの国…

「愛する人達」

川端康成著日本ノーベル賞作家短編9集脆くとも迷いながら逞しく日常を生き抜く”愛すべき人々”を描く昭和初期の男性優位社会にあって既に自由奔放な女性を描くのは流石だ“母の初恋”“女の夢”“ほくろの手紙”“母のさいころ”“燕の童女”“夫昌婦和”“子供一人”“ゆく…

「薔薇の名前 下」

ウンベルト=エーコ著 イタリア作家抜群の推理を発揮するウィリアムとアドソだが謎が謎を呼び増える変死体遂に異端審問官ギー到着闇の図書館に待つ人物とは?刻の終末を告ぐ喇叭が示す”アフリカの果て”焦がれ散る“薔薇の名前”と書物“中世のシンクタンク”修道…

「薔薇の名前 上」

ウンベルト=エーコ著イタリア作家全世界5500万部の歴史ミステリ中世イタリア修道院で”ヨハネの黙示録”に肖る連続殺人事件発生異端審問神学論争3竦みの教皇皇帝派vs強硬派禁じられた図書館「詩学」2章 “笑い”聖務日課普遍論争“書物を巡る陰謀の7日間”に探偵…

「ミスターピップ」

ロイド=ジョーンズ著ニュージーランド作家パプアニューギニアvsブーゲンヴィル島の独立運動ディケンズ「大いなる遺産」主人公の孤児ピップ白人教師が島の子供に語るピップは伝統社会と独立派に実在のスパイを隠棲したと誤解を生む燻んだ村と教師は“大いなる…