MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-11-05 to 1 day

「迷子たちの街」

パトリック=モディアノ著ノーベル賞フランス作家2つのパスポートを見つめる推理作家日本の出版社との商談で 20年振りにパリへホテルの名刺が”社交界に響き渡る1発の銃声”の記憶を呼び覚ます記憶から逃げたサロン仲間とパリの街秘密は今も”迷子”のまま夏の蜃…

「ケルト人の夢」

マリオ=バルガス=リョサ著ノーベル賞ペルー作家大英帝国領事ロジャー=ケイスメントコンゴとペルーでゴムの強制栽培を告発し英雄へ祖国開放を試み敵国ドイツに接近し反逆罪&同性愛で処刑権力に慄き友と師と離れども揺るがぬ”ケルト人の夢”鄙びた恩赦の署名…

「ヌマヌマ」

全作本邦初訳ロシア12作家短編集日本を代表するスラヴ・ロシア文学研究者&翻訳家の沼野夫妻による現代ロシア文学セレクションソ連崩壊で禁書逆輸入や過激な新興文学の躍進が著しいぶっ飛んだSFや官能作品に怪奇から純文学まで“嵌ると抜け出せない”知られざる…

「アイルランド 歴史と風土」

古代ケルト〜現代を英仏独西などの国際交流視点で分析“ボイコット”同名の大尉のアイルランド市民迫害時に起きた抵抗運動が語源クロムウェル時代まで原始的生活だったが大英帝国に編入後は急速に近代化現在Tax HeavenでApple本社を構え欧州第2の平均年収を誇…

「アイルランド紀行」

西部コナハト北部アルスター東部ダブリン縦横無尽のアイルランド紀行4人のノーベル文学賞やケルト音楽と高い文化を誇りウィスキーに舌鼓元々ハロウィンも妖精&自然崇拝と鎮魂のケルトの祭礼5世紀に聖パトリック布教でカトリック化最近まで英国との宗教対立で…

「名人」

川端康成著日本ノーベル賞作家実話に基づく作品生涯にして現役最後の勝負に挑む碁の名人を切迫した雰囲気で描く正直ルールを知らないので難しかっただが一手に80時間かけ病弱化しながらも伝統と真っ向勝負の”芸術的囲碁”を貫く名人に痺れた日本文化の美しさ…

「ダンシングガールズ」

マーガレットアトウッド著カナダ作家短編6集“火星から来た男”ストーカー相手への感情移入“ベティ”NTR女が狂気に至る“キッチンドア”森小屋の老女の殺意“旅行記者”記者と私人の間“訓練”病弱者内での下劣な迫害と医師“ダンシングガールズ”華やぐ国際交流の暗い…

「”知の商人”たちのヨーロッパ近代史」

近代ヨーロッパ印刷&出版史活版印刷技術普及で”知の商品化”が促進大衆&複製化する絵画と思想は弾圧・検閲・焚書・発禁の受難続き“知の商人”も命懸け知的財産の大衆化は大学の地位向上・カフェ増加・絵画の地位低下・知識人亡命・衆愚政治への利用が増加した

「回転木馬のデッドヒート」

村上春樹著短編8集都会の喧騒に戸惑う人々著者が聞いた&体験した話を物語るスケッチ作品嘘か誠か誇張か妄想か?曖昧な点が絶妙“タクシーに乗った男”“今はなき王女のための”“プールサイド”“ハンティングナイフ”“雨宿り”“嘔吐1979”“野球場”“レーダーホーゼン”

「ユダヤ人問題に寄せて/ヘーゲル法哲学批判序説」

カール=マルクス著ドイツ哲学者本編+解説で半分哲学者→記者→経済学者と生きた著者の博士論文流行のヘーゲル弁証法批判“宗教は阿片”目的は脱宗教(政教分離)手段は反隷属と共産主義過程は資本主義批判と階級是正結果は「資本論」と社会主義

「古都」

川端康成著日本ノーベル賞作家由緒ある呉服屋養女の千重子瓜二つの苗子が双子と知り人違いながら求婚する秀太惹かれ合う若者の爽やかで淋しげな出会いと別れに胸を打つ四季折々の”古都”の絃歌と花吹雪祇園祭の夜の月虫愛づる姫君に恋し抱かれて“みなはんもお…

「20世紀グルジア短編集」

現代グルジア(ジョージア)作家の短編12集峻険なコーカサス山脈と風光明媚な雪景色の牧歌的風景言語系統分類不可なグルジア語世界で最も複雑な多民族国家グルジアの歴史と文化を代表作家の短編作から選出悲喜劇・風刺・抒情詩と密度濃い1冊個人的なお勧めは”…

「リンカーンとさまよえる霊魂たち」

ジョージ=ソーンダーズ著アメリカ作家ブッカー賞受賞作“史上最高の大統領”と呼声高きリンカーン実は南北戦争当時は”無能で醜男な大統領”と酷評された息子が急逝し窶れ顔で墓参りに佇む大統領現世に未練を残したユーモラスで愛しい霊魂が温かく見守り物語る

「琥珀捕り」

キアラン=カーソン著アイルランド詩人オランダ(特にフェルメール)・ギリシア神話・アイルランド民話を混ぜ込みA to Zの章で纏めた”琥珀”の叙事詩樹液が特定の条件下で長い年月をかけ石化する”琥珀”澁澤龍彦のような世界観で魅せる独特な”物語なき物語”分類…

「荘園」

”荘園”で時代が読み解ける近代以前は国家の根幹を成し税・職業・身分に直結イスラームのイクター制やインカのミタ制と世界史でも地域に合わせ個性豊かな土地制度がある公地公民→班田収授法→三世一身法→墾田永年私財法→御恩と奉公その後も貨幣経済と貿易促進…

「地上で僕らはつかの間きらめく」

オーシャン=ヴォン著ベトナム系アメリカ詩人著者の半自伝亡命後もベトナム戦争のトラウマに苦しむ母と祖母虐待を受ける息子歪んだ愛憎を受け少年は同性愛・煙草・薬物に染まっていく凄惨なNYのマイノリティ社会を描く愛する文盲の母に宛てた手紙に号泣必死

「雨の島」

呉明益著台湾作家6連作短編環境問題×台湾部族×生物学雨が降る土が潤うプログラムの”裂け目”が生む静謐な”雨の島”“闇夜 黒い大地と黒い山”“人はいかにして言語を学んだか”“アイスシールドの森”“雲は高度2000mに”“とこしえに受胎する女性”“サシバ ベンガル虎お…

「幸福な無名時代」

ガブリエル=ガルシア=マルケス著ノーベル賞コロンビア作家ジャーナリスト時代の長文記事集西欧巨大メディアに速報性で敵わないため物語調の記事で対抗大量の登場人物と精密な史実を操り既に後の創作活動への片鱗が垣間見えるコロンビアとベネズエラの内政…

「ぼくとネクタイさん」

ミレーナ=美智子=フラッシャール著日系オーストリア作家“ネクタイが素敵だからネクタイさん!”引き籠りの少年と初老で解雇された男性会社員“Hikikomori”は英語でも固有名詞が存在するリストラ・不登校・窓際族…息苦しい成果&協調主義の日本社会を歩み寄る2…