MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-10-21 to 1 day

「ゴドーを待ちながら」

サミュエル=ベケット著ノーベル賞アイルランド劇作家全編通して”ゴドー(GOD?)”を待つ男2人の不毛な会話背景は1本の木だけ誰も来ない何もしない何処へも行かない現実は不条理だからこそ人は泣き笑い語り叫び嘯きたがるのだろう人生に意味はないなくていいそ…

「パリ環状通り」

パトリック=モディアノ著ノーベル賞フランス作家エトワール凱旋門歴史と私たちの全てが通過する交差点“パリ環状通り”逃げる者騙す者僻む者鬻ぐ者野次る者嗜む者迷う者失う者憂う者悦ぶ者“その時”魔都を生きた者はみな孤児であったナチ占領下パリが生む悪意…

「中世イタリアの都市と商人」

振り子が揺れる…斜塔が沈む…そして地球も動き出す…!ガリレオが中世ピサに現れたのは偶然ではない東方貿易でアラビア数字・公証人・複式簿記・0の概念を学んだイタリア商人キオス島の明礬が毛織物に光沢を齎す常時武装で困窮時は海賊職人&農民の移動で都市形…

「世界文学論集」

ジョン=マクスウェル=クッツェー著ノーベル賞南アフリカ作家著作の9割が古典を下地にする著者数学・文学で修士号で元プログラマーの著者の立体的文学考察時制で不条理世界を生むカフカ告白と二重人格の語り手古典派音楽と文学の共通性近代文学誕生の瞬間ア…

「日本の古式捕鯨」

鯨油目的で来航したペリー捕鯨は幕府の認可と祭式を伴う神聖な儀式で天皇も僥倖した特に以下を解説・鯨の種類と生態・仕留め方とその歴史の変遷・肉の美味と骨や髭など全部位の有効活用・捕鯨用具と勢子船シーシェパードが絶賛批判中だが1無形文化遺産の消失…

「犬を愛した男」

レオナルド=パドゥーラ著キューバ作家トロツキー亡命〜暗殺を描くNFハバナで創作する獣医学生世界革命論者トロツキー彼を狙うスペイン人暗殺者3視点から描く650Pの歴史サスペンス人間不信者ほど犬を愛するらしい故に”鼻も利く”敵味方問わず権力に弄ばれ破滅…

「自由の国で」

ヴィディアダハル=スラヤプラサド=ナイポール著ノーベル賞トリニダード=トバゴ作家ブッカー賞受賞作5連作中短編1971年ポストコロニアル文学の原点各編共通項は旧英領&印僑の登場小国トリニダードから第三世界を俯瞰・整理し文学に仕上た傑作独立し自由を…

「フォンタマーラ」

イニャツィオ=シローネ著イタリア作家ムッソリーニ時代を揶揄した架空農村フォンタマーラ独裁開始で巨大資本と結託した政府に水源を制限された村は抵抗を開始政権スパイvs地元報道紙当時のイタリア情勢を皮肉りファシズムだけでなく格差拡大や首都一極集中…

「椿姫」

アレクサンドル=デュマ=フィス著フランス作家高級娼婦と青年の淡い恋と破局滲み縒れた手紙は2人の愛の証この手で抱き寄せてこの手で慰めてこの手で突き放したね“木の芽吹く春の椿の葉の下で”ぼくはまた会えない姫(きみ)に逢いにゆくーヴィヴァルディ「オペ…

「象の旅」

ジョゼ=サラマーゴ著ノーベル賞ポルトガル作家時はアヴィス朝ジョアン3世ハプスブルク大公に贈る象の世話をするインド人象使いの実話地中海にアルプス越えリスボン〜ウィーンの旅路を象と現代人の視点でユーモラスに描く象神ガネーシャ等の小咄はインド航路…

「眠れる美女」

川端康成著日本ノーベル賞作家3短編集“眠れる美女”娼家に通い美少女を弄る老人セックスという”動の普遍的エロス”視姦&屍姦という”静の特殊的エロス”耽美な寝顔と乳房“片腕”互いの片腕を交換した男女の恍惚と違和感“散りぬるを”殺人事件の客観化色は匂えどい…

「風の歌を聴け」

村上春樹著デビュー作著者自身の人生と葛藤を反映し登場人物に思想的に語らせる作風既に独特の会話リズムや趣味的博学が散見僕と鼠とジェイと女ポテトとビールの詩を唱っては訊くひと夏の唄さぁラジオを聞こう!譜を詠おう!無名の作家ハートフィールドに捧…

「涙が星に変わるとき」

チンギス=アイトマートフ著キルギス作家美しい作品だったコルホーズ(集団農場)期の国際トラック事務所腕と誇りを持つ運転手は美女との駆け落ち婚後に無謀な運転で失職し妻も失踪漸く再開した妻と息子には”父”がいた…激情と悲哀と喜憂満天の星空は涙の数だけ…

「鍵のかかった部屋」

ポール=オースター著アメリカ作家NY3部作の1冊人気小説家の謎の失踪彼の妻を想う友人宛の手紙には彼女と結ばれて欲しいとの伝言が幸せな家庭を築くも小説家を忘れたい妻と伝記を執筆する友人は不和を招く突如連絡を受け”鍵のかかった部屋”で再会する男たち…

「1941年 パリの尋ね人」

パトリック=モディアノ著ノーベル賞フランス作家本書は小説ではなく”広告の記録”というべきだろう戦争は”尋ね人”を生む著者同様ユダヤ系少女の”尋ね人広告”記事からナチ党支配期フランスを暴き出す“名を忘れた人々に逢いに逝く”10年の取材で語り手たる使命…

「ロード・ジム」

ジョゼフ=コンラッド著ウクライナ系イギリス作家航海中に船が転覆し唯一生き延びたジム罪悪感に苦しみ裁判でも責任を擦りつけられ安息の地スマトラ島へ部族に英雄と称えられ先住民娘との恋の末に祖国植民者と対峙マーロウの英雄的かつ臆病者な描写とジムの…

「優しい語り手」

オルガ=トカルチュク著ノーベル賞ポーランド作家ノーベル賞授賞式講演宇宙は人間の脳構造に似ている誰もが星を結ぶ様に無限の星座を描ける”星座小説”既に”世界文学の新古典”を築いたトカルチュク情報の洪水に溺れる現代に”優しい語り手”は不可欠国境の融解…

「バグダードのフランケンシュタイン」

アフマド=サアダーウィー著イラク作家国際ブッカー賞最終候補作自爆テロ頻発の現代バグダード遺体を基にフランケンシュタインが作られ跋扈する暗躍する占星術師長と小物屋事件を追う記者と家族怪物の正体とは?多民族多宗教国家の難題も描くホラー小説

「ノスタルジア」

ミルチャ=カルタレスク著ルーマニア作家半自伝小説青春は人生の”故郷”なのだろういつ何度でも立ち返り”ノスタルジア”を惹起してしまう豊かな婉曲表現と改行のない密度濃い文章で知人を彩り夢想するルーレットに始まる記憶の断片はやがて宇宙探索へそれはま…

「移民の記憶 マグレブの遺産」

ヤミナ=ベンギギ著アルジェリア系フランス映画監督原作は映画マグレブ移民の人生を母・父・子供と12人のインタビュー形式で紡ぐ自国ではコロン(白人植民者)に酷使され夢を求めフランスへだが低賃金重労働・二重国籍・イスラム差別に悩み家族も心身も壊され…