MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-09-17 to 1 day

「みずうみ」

川端康成日本ノーベル賞作家ストーカー”したい男”と”されたい女”“瞳がみずうみの様に深淵に見えた…”ロリコン教師を美しい比喩とリズムで淡い恋にさえ魅せる主人公が転落中なのに恍惚とさえ思わせる魔性の女をヒロイン然と振る舞わせる異常人格者を魅了的にす…

「黄金のブダペスト」

エステルハージ=ペーテル著ハンガリー作家短編&エッセイ10集“ハーン=ハーン侯爵夫人のまなざし(9章 見えない都市)”“青髭公のすばらしい人生”“宿屋の主人の日記”“我々が今いる場所”“黄金のブダペストを見たいですか”“女”“薔薇”“ある五月”“メキシコの宿題”“…

「幽霊たち」

ポール=オースター著アメリカ作家NY3部作の1冊ホワイトから向かいに住むブラック監視の依頼を受けた私立探偵ブルーしかし余りに日常的な生活を送るブラックと依頼自体に次第に疑問を持ち始める監視する者か?監視される者か?客体と主体が混淆し自己認識が…

「パタゴニア」

ブルース=チャトウィン著イギリス紀行家古代のオオナマケモノ”ミロドン”に魅せられパナマ運河以前の太平洋航路マゼラン海峡へ世界最南端”炎の島”先住民と移民の確執伝説の国化石の洞窟錆びれた鉄道ペリトモレノ氷河招かれざる共産主義者秘境パタゴニアの蒼…

「ぼくは覚えている」

ジョー=ブレイナード著アメリカ美術家・美術評論家“ぼくは覚えている”全ての文章がこの常套句を携えた詩ともエッセイともつかない1冊他人の記憶を覗くのは楽しい何でもない事を覚えていたり急に思い出したりこうした感覚が著者の美術の才能に直結しているの…

「高慢と偏見 下」

ジェーン=オースティン著 イギリス作家豊潤な言葉と繊細な心理描写に胸打つ後半エリザベスの瞳に惹かれるダーシーしかし階級がそれを許さない彼の不器用な求婚は失敗し姉妹は次々に破談しかしその優しさがもう一度ベネット家を解していく“高慢な男”と”偏見…

「高慢と偏見 上」

ジェーン=オースティン著イギリス作家文庫訳が8つもある超名著貴族女性は誰に嫁ぎどう地代を得るかが全ての時代男系嗣子のいないベネット家5人姉妹は”白馬の王子”を求め社交界へ気難しく高慢だが聡明なダーシー彼の凛々しい友人ビングリー“偏見”が恋の扉を…

「夜のみだらな鳥」

ホセ=ドノソ著チリ作家畸形児院兼人体実験所修道院&名家一族盲聾唖者・魔女・巨人・変身体・呪術師2つの時空と異能者の乱交が鬩ぎ合う”みだらな鳥たち”の晩餐80%を人体改造された主人公の怨嗟が劈く夜に王が坐すグロテスクな悪夢と迷宮の果てに誕生する”怪…

「感情教育 下」

ギュスターヴ=フローベール著 フランス作家悶々とする青年に転がり込む相続遺産と高級娼婦の誘惑産業革命で格差と階級の不満が募り激動の政変の果て遂に二月革命勃発社交界入りを果たした青年は野心から意中の夫人でない令嬢と結婚革命に揉まれ冷酷と情熱を…

「感情教育 上」

ギュスターヴ=フローベール著フランス作家近現代文学完成者の傑作歴史家並の分析で七月革命〜二月革命期のパリを各階級を多声的に描く歴史絵巻青年学生は貴婦人に一目惚れし多数の女性と関係しながら”感情教育”されていく共産主義派vs王政派vs資本派vs秘密…

「青ひげの卵」

マーガレット=アトウッド著カナダ作家短編5集表題作が秀逸“ルゥルゥ”ルゥルゥの呼び声とは?“青ひげの卵”女性の見る男性社会と群がる女性への皮肉“緋色のトキ”伝説の朱鷺を探すコンラッド的冒険“罪食い人”罪悪請負人の不思議な体験“サンライズ”曙時の儚いゴ…

「ねじの回転」

ヘンリー=ジェイムズ著アメリカ作家ホラー?オカルト?幽霊?ミステリ?サスペンス?心理小説?ドッペルゲンガー?ピカレスク?部外者の新任家庭教師視点それ自体”信頼できない語り手”全てが曖昧な元祖ホラー小説難解だがそれ自体が怖い気もする※ネジの回天…