MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-07-01 to 1 day

「蜃気楼」

ナギーブ=マフフーズ著ノーベル賞エジプト作家不器用なお坊ちゃまが祖父→母→妻と抱く嫉妬と憧れの変遷を描く半世紀前のエジプトが舞台だが驚くほど共感漸く掴んだ妻と幸せだが性的不能という残酷な現実は互いの信頼を奪い破局へ導いていく軍事業人口30%とコ…

「自然界に隠された美しい数学」

対数螺旋フラクタル黄金比自己相似同心円超ひも理論雪の結晶は凍るまでの微妙な運動の違いで形が異なり実質ほぼパターンは無限人間と違い自然は常に楽な道を選ぶ最も美しく無駄なき収斂一見すると無秩序に見えて実は完璧な秩序を保つ”数学に満ちた自然界”

「贖罪 下」

イアン=マキューアン著 イギリス作家第2部正義感に駆られた過去罪悪感に怯える現在少女は贖罪を求め逃げる様にダンケルクの戦場看護婦となる人の業を知り漸く自分と向き合い始めた彼女の前に釈放された幼馴染と姉が現れる第3部語られた“あの日の真実”65年の…

「贖罪 上」

イアン=マキューアン著イギリス作家発表作ほぼ全てがブッカー賞最終候補と驚異的な実力者の”最高傑作”第1部姉と幼馴染の”秘事”を目撃した13歳の多感な少女直後に邸内で男に襲われた従姉妹少女は証拠不十分ながら幼馴染を告発その冤罪が彼女と家族を地獄の果…

「虐げられた人々」

フョードル=ミハイロヴィチ=ドストエフスキー著 ロシア作家著者には珍しい純愛モノ結婚・お金・身分・虐待老人も犬も寂しく死んでいく弱者は最後まで弱者貧しくさえなければ虐げられない筈の人々を優しく強く語らせる既に社会主義の萌芽が見える帝政ロシア…

「牛/築路」

莫言著中国ノーベル賞作家文化大革命時代の制限的な共産主義社会を滑稽に描く“牛”酪農業重視で貴重なはずの牛が不衛生により需給バランス崩壊で去勢一人っ子政策を揶揄“築路”道路建築現場のドタバタ劇不倫・暴力・動物虐待“人間らしさ”という粗暴さを近代化…

「続 赤い高梁」

莫言著中国ノーベル賞作家ベルリン国際映画賞受賞の原作一族は村を追われ獣たちの森の縄張りを荒らす日本軍も共産党も縦横無尽に追いかけ中華を蹂躙強姦され拷問される”赤い高梁の一族”全ての生命は土へ還り中華人民共和国が成立する“犬の道”“高梁の葬礼”“犬…

「赤い高梁」

莫言著中国ノーベル賞作家農村vs日本軍(鬼子)vs共産党vs国民党地を血で染める”赤い高梁”5中編を親〜子〜孫の3世代を舞台に”生まれていない語り手”が導く決起する八路軍と迫る日本軍血と土と酒の醸す”赤い地獄絵図”数奇な一族は神話的現代を旅する“赤い高梁”“…

「サークルゲーム」

マーガレット=アトウッド著カナダ作家処女作にしてカナダ総督賞受賞の詩集無機物や自然に人格を持たせて語る詩が多く寒冷だが暖かい自然豊かなカナダを想起させるフェミニズムや貧富の格差など有象無象の大衆の声が強く静かに訴える2021年ノーベル文学賞を…

「”イスラーム世界”とは何か」

ムスリム人口”1.8億人の少数派”を抱えるインドはイスラーム世界なのか?世界初の全ユーラシア史を綴ったイルハン国宰相ラシード=アッディーンの「集史」イスラーム世界から見た世界史世界史から見たイスラームイスラーム・ヨーロッパ・日本の視点で世界史を…

「イラン史」

ターヒル朝〜近現代イランイランの歴史は面白いイスラム初期は統治ノウハウを持つササン朝官僚起用セルジューク朝からトルコ系と歴史を共にし文武分担も融解モンゴル下で実力主義へ白羊朝と黒羊朝でサファヴィー教団とアゼルバイジャン系キジルバシュが合流…

「変」

莫言著中国ノーベル賞作家中国共産党と共に歩んだ自身の人生を物語にした自伝小説小学校5年生で放校文化大革命が起こり人民解放軍に起用され「赤い高梁」で成功するまで教育を受けられなかった過去その代償に農村で自然や動物を観察した経験が彼の作風”幻覚…

「像の物語」

100kgの牙爪楊枝も摘める器用な鼻1tの蹄調教可能な賢さハンニバルもバーブルも像で敵国を蹴散らした古代の最強生物兵器象を家畜化したアジア象を狩猟したアフリカ優しく仲間想い故に密猟も後を絶たず1990年まで日本は最大の密輸入国最近では糞を活用し高級コ…

「マイタの物語」

マリオ=バルガス=リョサ著ノーベル賞ペルー作家現在と過去が語り手と追憶が句読点レベルで交錯地味な学生だったマイタはなぜ革命家になったのか?証言者が紡ぐ嘘と誠のメタフィクション一時トロツキーやカストロを仰ぎ大統領選まで出馬した共産主義通のリ…

「中国の歴史8 疾駆する草原の征服者」

遼・金・元・清“Dynasties of conquest”征服王朝の定義天下餅は元が食べたが捏ねたのは契丹・女真・沙陀突厥燕雲十六州で半農半牧に成功した遼・金チベットと西域を征した西夏・吐蕃能力主義の”戦わない軍隊”元話題のウイグル問題も遊牧民の理解が不可欠

「異端審問」

当初アタナシウス派よりアリウス派の方が優勢だった中世は異端審問に始まり異端根絶に終わる南フランスのカタリ派などを狩り「薔薇の名前」で有名なベルナール=ギーが審問の定義を確立ユダヤとムスリムの多いイベリア半島で独自進化して新大陸従属の理論的…

「白檀の刑 下」

莫言著 中国ノーベル賞作家謀る西太后(慈禧皇后)猛る康有為嗤う袁世凱傅く譚嗣同衒うドイツ軍西洋にない数々の伝統的残虐刑をドイツにお披露目ナチやカルト刑で有名なドイツとも妙に親和徹底的に大衆目線で5人の大衆が交互に語り手を紡ぎ処刑と闘う愉悦極ま…

「白檀の刑 上」

莫言著中国ノーベル賞作家天才処刑人vs暴動首謀者vsドイツ膠州湾鉄道敷設計画反乱は義和団を呼び”事変”は大量処刑へ縺れ込む中国において極刑は”芸術”腰斬・宮刑・炎鉄刑そして”白檀の刑”西遊記や蛇人間と招かれざる魑魅魍魎たち堕ちた清の逃げ惑う民を待つ…

「物理学の原理と法」

“原理”と”法則”の違いは何か?原理=始原の理法則=現象と現象の関係言わずもがな世界は”物質”で出来ている“エウレーカ!”思わずアルキメデスの様に叫びたくなる物理学の基礎を概観物理学専攻者は平均年収700万円以上らしいほぼ数学的内容だが実験と具体例で…