MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-05-08 to 1 day

「日本の歴史4 平城京と木簡の世紀」

文献学者が木簡から西国を分析藤原不比等・長屋王・吉備真備・阿倍仲麻呂の尽力により徐々に朝廷が形成飛鳥京→難波京→大津京→藤原京→平城京→長岡京→平安京木簡と遷都数の多さは大化改新直後は政治の不安定さと政治文書に注力した政府の姿を物語る生き証人

「日本の歴史3 大王から天皇へ」

歴代中華王朝の東アジア朝貢外交システムを”冊封体制”と呼ぶ 実は名付け親は日本人学者 古代日本も華夷秩序の中で巧みに生きてきた 実在疑問視の聖徳太子の時代に蘇我氏や物部氏との内乱をいち早く収め遣隋使と遣唐使で律令政治体制を築き仏教伝来し文化輸入…

「日本の歴史2 王権誕生」

古今東西そうだが国家はムラからクニを経て誕生 イト国(現福岡県糸島市)やナ国(倭奴国)は各地の王が凌ぎを削り大王へ 祭政一致国家のため銅鐸・古墳・鉄器など近畿〜九州は生活文化が類似している 前漢や衛氏朝鮮など海外情勢への危機感から各大王達が結託し…

「日本の歴史1 縄文の生活誌」

縄文遺跡の発掘資料を元に縄文人の生活を分析 日本列島はフォッサマグナで東西の文化境界線がはっきり分裂 薄調味料の濃淡や方言など大きく違う また近畿に比べ遅れたイメージの大規模な青森の三内丸山遺跡はこの時代まだ東北も文明地たる潜在力を持っていた…

「日本の歴史0 日本とは何か」

今年のGWは全てこれに捧ぐ! 怒濤の”講談社学術文庫ver.日本の歴史”シリーズ全26巻初刊 まずは日本文明論概説 日本は”瑞穂国”宜しく稲作国家とされるが古代ですら3割程度 寧ろ団栗や魚介に狩猟が多数派 “日本”の国号が初めて使われたはいつ? 大衆文化で読み…

「訴訟」

フランツ=カフカ著 ユダヤ系ドイツ作家 一般に「審判」で知られる未完の不条理小説 有望株の若き銀行員Kは覚えのない訴訟を受ける 初めは余裕だが徐々に焦燥する様子が監視カメラの様な描写で進む これほど読後に混沌し感想が多極化する作家は日本では村上…

「日本史の謎は地形で解ける」

半分は江戸時代の話だが日本史を地形で分析した本 地理的空間は現存するし最も有用 “エジプトはナイルの賜”とあるように地形が歴史に大きく関わるのは世界史では常識 逆に日本史はそれほど学問が遅れている 奈良に古都が置かれた時代と1970年代の人口が同じ…

「B.C1177」

紀元前1177年 “海の民”襲来 オリエント世界のエジプト新王国を除き全滅 古代文明最大の謎に挑む書 青銅器文明から鉄器文明の移行前に古代地中海は平和外交貿易を謳歌していた EUに遡ること3000年前に貴重な鉱物資源を共有し交易 だが寒冷化で飢饉になり混乱 …

「雨の科学」

雨・雪・雲の成り立ちを解説 熱気は軽く冷気は重い物理原則は雨も同じ 軽く小さいと空気中に浮かぶ水蒸気の雲 重く湿度が上がると液体化した積乱雲などの雨 更に雨が凝結し結合し合うと雪・雹・霰・霙 白は陽光を宇宙に反射し冷却効果があるため地球温暖化も…

「新種の発見」

分類学入門書 実は新種は年間2万種発見され全生物で180万種で推定1000万〜1億ともされる 定義が曖昧で頻繁に見直される為で最近では栄螺も新種認定 言わばペットの犬も品種改良野菜もスーパーの刺身も新型コロナも新種 AI・DNA鑑定・ビッグデータの発展で判…

「感染症の中国史」

不衛生で人口密度が高く多温多湿で水場と生物の往来が頻繁 感染症発生の条件だ “水の都”武漢でコロナ誕生も頷ける 中国王朝交代の近因は農民反乱だが遠因は疫病で人口1/10激減もザラ 日本の台湾統治もコレラが変えた 100年前も中国人を病原菌扱いで人種差別…

「星の神話・伝説」

理系の天文学と文系の神話学がいい塩梅で図が豊富 基本的に星座はバビロニア生まれギリシア育ちだが中国や日本独自の呼称も掲載 古代エジプトではシリウスでナイル川氾濫の時期と水量を予測していた 現在もカイロにはナイルメーターが随所ある 古代人の想像…

「鹿と少年 下」

家畜を漁る狡猾な熊スルーフットを討ち取ったジョディと鹿 だが鹿のフラッグの成長は畑や食料が重荷になり遂に飢えが現実味を帯びる 母オリーと家族は残酷な決断をせねばならなかった、、! 作者は本作執筆の為フロリダに移住 自然と動物の雄大な描写と人物…

「鹿と少年 上」

マージョリー=キナン=ローリングズ著 アメリカ作家 女性ピュリッツアー賞受賞者 フロリダの雄大な自然を前に育ったジョディ 凄腕の父に憧れ後追いするが父が毒蛇に咬まれ止血の為に母鹿を殺し肝臓で毒消し一命を得る 残された仔鹿を憐み育てると決意 だが…

「プークが丘のパック」

ラドヤード=キプリング著 ノーベル賞イギリス作家 意外と古代〜中世が謎なイギリスを妖精と童話で語る 文法ゲルマン系独語+単語ラテン系仏語÷2=英語 英語は妥協言語で文法は簡単だが発音とスペルに規則性がない 究極は暗記しかない最難関言語だと個人的に主…

「天使の蝶」

プリモ=レーヴィ著 イタリア作家 アウシュヴィッツ収容経験のあるユダヤ系化学者の短編15集 イタリア文学登壇もショアー経験がきっかけ 文明批判SF作家で科学の暴走を危惧 “詩歌作成機”AI小説家 “美の尺度”顔面偏差値測定器 “ケンタウロス論”幻獣ケンタウロ…