MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-05-08 to 1 day

「アンティゴネ」

ベルトルト=ブレヒト著 ドイツ劇作家 父を殺し母を犯したギリシア悲劇「オイディプス王」の娘アンティゴネ 戦争で逃げた兄の死をネタに呪われた一族としてクレオン王が迫害する姿を”総統”と称し時のヒトラーと取り巻きのイエスマンに重ねて批判 ソフォクレ…

「日本史の内幕」

著書が映画化されたりと古文書読解博士の語る日本史 小話が多く歴史の外観にはほぼ触れないしエピソードが短い分だけ内容が薄い 歴史学者のエッセイなので日本史好きには薦めるが不得意なら難しく感じるはず 1700年人口:世界6億vs日本3千万(世界シェア5%) や…

「古代中国史」

三皇本紀の神話から前漢武帝まで司馬遷「史記」の人物100人の伝説と史実を探る 「キングダム」以外にも悠久の古代中国武将・賢人・傾国の美女・歴代皇帝・諸子百家はどれも魅力的 こんなに面白いのに世界史の教科書ではサラッと流されて終わりなのでこういう…

「ペルシア人の手紙」

シャルル=ルイ=ド=モンテスキュー著 フランス哲学者 フランスに亡命したサファヴィー朝ペルシア貴族と祖国ハーレム宦官長・寵姫との往復書簡 イスラム文化や思想が詳細記述され東洋目線でフランス社会を風刺 一方で欧米の科学技術水準に注目し既に三権分…

「小さな国で」

ガエル=ファイユ著 内戦を経験したブルンジ系フランス移民ラッパー/詩人のNF処女作 先進国に飽きて移住した父フランス人 先進国に憧れ移住したい母ブルンジ人 平和だった国が街が家族がブルンジ内戦で崩壊していく 美しいアフリカの自然が虐殺の戦場へと変…

「シェリ」

シドニー=ガブリエル=コレット著 フランス作家 3度の結婚や同性愛と情熱に生きたフランス女性 齢50の美貌な高級娼婦レア 齢25の伊達貴族青年シェリ 愛人関係の2人だが青年の結婚話を機に嫉妬や未練など気付かなかった細やかな本心が顕になる 客観的分析力…

「赤い橋の殺人」

シャルル=バルバラ著 フランス作家 自国でさえ忘却されたが訳者の紹介で評価急上昇 “日本人が海外作家を再発見”とは感慨深い フランス版「罪と罰」と怪奇かつ人間の心理に踏み込んだミステリ ラスコリーニコフよろしく妄想で正当化した殺人動機に魘される主…

「二十六人の男と一人の女/グービン」

マクシム=ゴーリキー著 ロシア作家 "プロレタリア文学の父"の短編集 起きては寝ての強制労働 港町のアウトロー貴族の没落 群衆心理ゆえか意外とプロレタリアの方がユダヤ迫害(ポグロム)や人種差別が激しい 日露戦争では強国イメージだが想像より後進的で農…

「ペーター・カーメンツィント」

ヘルマン=ヘッセ著 ノーベル賞スイス作家 退学退職と挫折しながら独学で大成したロマン主義ノーベル賞作家ヘッセの処女作 孤独な主人公が友を得て恋して放浪する普通の人生の話 しかし少年から初老までの物語を20代の青年が書いたと言うから驚く 現代疲れで…

「日本の歴史25 日本はどこへ行くのか」

アイヌは何を残したのか? 沖縄で何が起きているのか? 朝鮮は何を訴えたいのか? 中国は覇権を握るのか? 象徴天皇生はどうなるのか? 日本の未来は地方や国際関係が複雑に絡まる地政学に左右される 7人の執筆陣から鳥瞰した日本現代史を客体化して分析する

「日本の歴史24 戦後と高度成長の終焉」

“戦犯か再起者か?” 岸信介や吉田茂も戦後政治の指導者は戦争で最前線に立ち戦犯候補にもなった GHQに始まり55年体制から目まぐるしい政体変遷 憲法改正問題が話題だがG占領国の制定した憲法を使い続けるのが自然なのか? 戦後史学習は日本の未来を学ぶに等…

「日本の歴史23 帝国の昭和」

過去は外国である タイムスリップしてるようで古典しかも海外文学を読むのは刺激があり発見が多い 戦中世代と戦後世代の戦争観は全く違う “帝国の昭和”を総力戦の愚行と一蹴するのは容易だが東南アジア満洲中国韓国と歴史観をどう共有すべきか? “外国の昭和…

「日本の歴史22 政党政治と天皇」

国防から拡張へ これが大正昭和の転落要因だろう アジアの星から植民地国家の覇道を歩み始め大英帝国に並ぶ日本 デモクラシーと政党政治が齎らした戦争への道 明治と異なり大正天皇が若くして死に昭和天皇が内閣調整力を育めず大衆愚弄政治と結び付き軍部台…

「日本の歴史21 明治人の力量」

不覊独立を掲げ富国強兵に勤しむ明治元勲 伊藤博文 山県有朋 黒田清隆 大隈重信 井上馨 伊東巳代治 彼らは極めて国難極まる状態だと認識し日清・日露を勝利に導いたが次世代を育てられず危機感欠如のまま大正時代に突入 少子化に危機感を覚えない今の政府に…

「日本の歴史20 維新の構想と展開」

Meiji Revolutionとも英訳される明治維新は近年評価が低下し逆に江戸は上昇している 理由は平和ない江戸に比べ大量殉死者と薩長土肥主導の苛烈な政府内闘争が蔓延ったため また士族と公家が権力を持ったが殖産興業で働く平民や農家の貢献が大きく強国の礎に…

「日本の歴史19 文明としての江戸システム」

幕藩体制は間接農生産消費を市場原理化した自己完結的な循環資本経済社会だった 離婚と再婚の多さや少子高齢化や勤勉社会は現代と重なる 人獣糞の肥料への再利用や回収屋など近代ヨーロッパとは別の文明システムを築いた江戸時代 独特な江戸文明を分析する

「日本の歴史18 開国と幕末変革」

北はロシアvs松前藩 東はアメリカvs幕府 西はイギリスvs薩摩 黒船以前にも以後も開国と分裂を狙う列強 倒幕vs尊皇vs攘夷vs開国と列強に感化された分裂状態から維新の奇跡が始まる やはり長き平和の江戸が用意した識字率・印刷普及率・国風文化が成功の理由だ…

「日本の歴史17 成熟する江戸」

資本主義経済は分業・資本蓄財・技術革新・平和社会・人口増加で著しく発展するという その意味で江戸は成熟した極めて資本主義社会 西の銀本位制と東の金本位制が併存し江戸時代固有の職業もあった 列強すら目を疑う世界初の大阪堂島の米先物取引も日常的に…

「日本の歴史16 天下泰平」

“江戸は書物の時代” ボルヘス曰く“書物は手足ではなく知の延長の道具という点で人類最大の発明” 現代の先進国よろしく情報と知が大衆化した天下泰平は娯楽・人口増加・経済繁栄を導き明治維新を用意した 旅ができ本屋が並び競りが声張り歌舞伎が踊る”パクス…

「日本の歴史15 織豊政権と江戸幕府」

殺す子規 信長 鳴かせる時鳥 秀吉 待つ杜鵑 家康 托卵習性のホトトギスは10以上の当字があり狡猾な印象の鳥 天下人3人も戦国の遺産を紡ぎ集大成の江戸幕府を築く 日本列島の中部から東西に遠征可能な地理的優位性と城下町がもたらす潤沢な財政基盤が戦費を賄…

「日本の歴史14 周縁から見た中世日本」

アイヌ・津軽・樺太・十三湊 沖縄・奄美・鹿児島 対馬・鬼界ヶ島・済州島 島国日本の辺境史 沖縄や北海道の地名は当字で元はアイヌ語や琉球語に由来 琉球と対馬は中韓と中継貿易で栄えアイヌは東北地方と積極交易した 15世紀で初めて国家統一した琉球史が面…

「日本の歴史13 一揆と戦国大名」

細川政元と明応の政変 東の北条早雲vs西の尼子・大内 大名を追い出し約100年も農民政権で運営した山城国一揆 城下町と村社会の変容が実力主義の家臣団と家中を組織し戦乱の近代へ 想像と破壊の戦国時代 “現代社会を理解するには応仁の乱以降で十分”というが…

「日本の歴史12 室町人の精神」

京都を舞台に財政再建で成功する義満〜義持〜義教 関所など国内交通インフラ・法・治安が向上し経済も繁栄 だが軍事力こそ欠如し徳政一揆で商業財政基盤が脆弱化すると応仁の乱で有力大名と幕府が潰し合う 肥大化する守護地頭はやがて戦国大名の跋扈する下克…

「日本の歴史11 太平記の時代」

まだ天皇家と武士の実力が拮抗する南北朝時代はそのまま”太平記の世界” 日本史唯一の国家侵略の元寇後 帝王後醍醐vs将軍足利尊氏 日明貿易で俄かに活気付く海洋世界の倭寇と朱印船と忍び寄る南蛮人 史上唯一朝幕が双方が京都に拠点を構え天皇の”正統”を確立…

「日本の歴史10 蒙古襲来と徳政令」

北条執権政治絶頂期に襲来するモンゴル軍 嵐の様に訪れ嵐の様な神風に散った元寇 しかし多大な戦費にも関わらず外国のため分譲地がなくご恩と奉公が崩壊し徳政令の甲斐なく鎌倉幕府は滅亡 同時代のイスラムのイクター制も同じ理由で諸王朝崩壊となっており感…

「日本の歴史9 頼朝の天下草創」

清和源氏嫡流にして鎌倉幕府創始者の源頼朝 西は盛者必衰の平家を壇ノ浦まで 東は実弟の義経と奥州藤原氏の東北まで “征夷大将軍”に君臨し征服するも3代で途絶え尼将軍の北条政子が執権政治へ移行 守護と地頭の二重統治や御成敗式目の裁判制度確立など中世初…

「日本の歴史8 古代天皇制を考える

万世一系1400年もの歴史を持つ天皇 良かれ悪しかれ日本の精神や倫理観に大きな影響を与えている 戴冠時の三種の神器による儀式や礼拝と神話との繋がり 夷狄の熊襲・蝦夷討伐の意味 中国の易姓革命との共通点と相違点 義務教育で日本神話を教えないのはどうか…

「日本の歴史7 武士の成長と院政」

律令爛熟から強すぎる王朝支配の院政へ肥大化する朝廷 出世した外戚から漏れ左遷された官僚が地方で権力闘争化し中世に至る そして関東で源氏が近畿で平氏が成長 天皇と貴族を利用しながら武力で権力掌握 日宋貿易など外交と経済を意識した政治の興りも注目…

「日本の歴史6 道長と宮廷社会」

貴族と天皇が消費社会を現出した平安時代の文化とシステムを摂関政治全盛の藤原道長の宮廷生活から実像に迫る 頭領・日記・祭・裁判・神事・外交・唐物・仏教、、 どれも権威に利用され「源氏物語」など代表的な古典文化が発展 文化面から藤原氏と天皇の動向…

「日本の歴史5 律令国家の転換と日本」

唐に倣い律令国家的中央集権体制を整えた朝廷 都で華の貴族文化が繁栄する一方で地方は頭領の搾取で伝統的郡司が没落 天皇権威と藤原摂関政治が確立し安定する中で荘園が誕生 地方では荘園を武力で管理する新支配層の武士が台頭してゆく ”古代の終わりの始ま…