MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-04-27 to 1 day

「アウルクリーク橋の出来事/豹の眼」

アンブローズ=ビアス著 アメリカ作家 アメリカの”死と死後の作家” 死をテーマにした短編14章 報道人としてアメリカ史上最大死者数の南北戦争(人口の1/15が戦死)に触発され死を冷静に描いた短編を数多く残す どんでん返し系で面白い 芥川龍之介が彼に触発さ…

「海の地政学」

最近流行の海の地政学 元海軍将校にして学者でもある著者がマハンに次ぐ現代シーパワー論を展開 太平洋 大西洋 インド洋 カリブ海 南シナ海 北極海 アメリカの海上覇権を考察 上級将校から直々に日本がアメリカの最重要同盟国で東アジアを制する者が世界を制…

「愚者(あほ)が出てくる 城寨(おしろ)が見える」

ジャン=パトリック=マンシェット著 フランス作家 暗黒ミステリ ヘミングウェイの様に心情描写がないが反対に残酷で冷静な文体で最後までトップギアで展開 前科者の女が富豪の遺産を継いだ少年と誘拐される 脱獄した2人は殺し屋に追われ狂気と陰謀に直面し…

「音楽嗜好症」

音楽×医学 実在する患者のカルテを基に音楽にまつわる脳科学の不思議な世界を約30のエピソードで紹介 耳元でエンドレス再生するリズム 音楽に色や香りを感じる共感覚 盲人に高確率で起きる音楽サヴァン症候群 楽曲がクラシック偏重なのはご愛嬌 音楽は夢と謎…

「概説インドネシア経済史」

古代〜現代のインドネシアを経済で分析し解説 経済なのでお固いがデータ充実で説得力があり恐らく最良のインドネシア本 インド商人→ムスリム商人→オランダ→華僑→日本 中継貿易地として敏感に流行を感じ取り適応する柔軟性は流石 歴史も経済も文化も学べる入…

「ブロディーの報告書」

ホルヘ=ルイス=ボルヘス著 アルゼンチン作家 ボルヘス短編集 隠喩の多いボルヘスにしては珍しく直裁な表現が多い 母国アルゼンチンのガウチョを中心に展開される”大人の怖い話” 起承転結の爽快感 長編小説は長い分だけ著者の趣味や愛を遠回しに語るけど短…

「オランダ東インド会社」

オランダ東インド会社とインドネシアと日蘭交流の歴史 略称”VOC” この1会社がインドネシアを征服したのは香辛料貿易で莫大な利益をが上がるため 唯一ヨーロッパで幕府に貿易を許され半分の利益を日本で稼いだ この時代に日本が大量の金銀銅を国外流出し今は…

「経済大国インドネシア」

インドネシア経済の入門書 人口世界第4位 2.5億人 世界最大のイスラム国家 海洋国家・資源・地理的優位性・IT... 宗教も司法も外交も極めて柔軟に経済開発を遂げた新興国有望株の筆頭 グラブなど実はユニコーン企業が5社もある 司法宗教外交ともにバランス重…

「ジャガイモの世界史」

みんな大好きジャガイモの世界史 内実は半分日本史 アンデス原産で日本にはジャカルタから伝わったのでジャガイモと言う 実は有毒 南極と北極を除く全ての地域で栽培される 理由は栄養価・保存性・早実性・適応力・味覚・繁殖力 ジャガイモ飢饉など歴史を動…

「この人を見よ」

フリードリヒ=ニーチェ著 ドイツ哲学者 “この人”とはニーチェのこと 自身の入門書を自分で書く意外とお茶目なニーチェ君 全代表作を簡潔に紹介 文章は婉曲的でやはり難解だが何故か心地よく感性のある人は意外と読めるかも “神は死んだ” 人類は反自然の性行…

「国マニア」

正直世界で知らない国・地域など無いと自負していた しかしまだまだあるもんですね笑 珍国の蘊蓄盛り沢山な世界史・地理マニア必見の書 さいたま市議員も務めた著者 日本の今のテレビは”日本スゴイ”ばかりでつまらない 英語だけじゃグローバルにはなれない …

「JOKER」

社会に気圧され生きる意味に苦しむ男 世間からは殺人者として堕落する様に見えても男は生き甲斐を見つけ栄光の階段を駆け上がる様に悦に浸りゆく 他のシリーズとの連動も流石 “悲劇の道化師”が”喜劇の冗談者”に変貌する時 <JOKER>が産声を上げる</joker>

「おれにはアメリカの歌声が聞こえるー草の葉」

ウォルト=ホイットマン著 アメリカ詩人 “おれ”という傲慢な自称やプラグマティズム的な二項対立式の散文などは如何にもアメリカ ナショナリズム醸成に伴い国家誕生時は国を代表する文学者や詩人が多い 彼もその1人 詩に音楽を与えるとアメリカ国歌が聞こえ…

「リスク 下」

下巻は最新の金融工学や投資の極意と理論を学べる 投資本にもオススメ ベルヌーイの大数の法則 ナッシュのゲーム理論とナッシュ均衡 パスカルの確率論 ケインズ派の分散投資とデリバティブ パチョーリの複式簿記 ベイズの統計学 確率がリスクを生む リスクが…

「リスク 上」

前半はリスク概念形成までの歴史 後半は投資の基礎知識と実務を解説 保険やリスクマネジメントは現代ビジネスや投資に不可欠 インド0の概念とイスラム代数学はヨーロッパにて確率論を生む リスクは株式市場を生み一獲千金の夢を幅広く共有可能に 保険とリス…

「移行化石の発見」

“進化論は本当か?” アメリカは現在も5割が神の天地創造を信じ進化論を否定する 例えば恐竜が鳥に進化する途上にあたる両方の特徴を持つ種の移行化石発見が少ない為だ だが最近は始祖鳥など移行化石発見が著しい 馬・鯨・人・象に絞り移行化石のロマンと進化…

「故郷/阿Q正伝」

魯迅著 中国作家 清朝末期の体制批判を行う文学革命 日本が明治維新で化けたので中国留学生が激増したが魯迅もその1人 夏目漱石や芥川龍之介をモデルに執筆 主人公の疑問と悩みが魯迅と重なる比喩で鋭く批判 村上春樹や大江健三郎も愛読 「1Q84」のQは「阿Q…

「戦国日本と大航海時代」

信長/秀吉/家康/伊達政宗の外交と経済政策を分析 帝国主義の基本は国内分裂を促し消耗させて政治経済的従属依存を強制させる点 逆に国家統一を成した明・日本は付け入る隙がない 戦国時代に鍛えた巧みな統治力は明治維新以前に1度ならず2度までも日本は植民…

「物語による日本の歴史」

古代の日本神話から中世鎌倉までの説話やお伽話から日本史の時代背景を分析した本 物語自体の訳も読みやすく建国神話・和歌・平家物語など有名なものからマイナーなものまで収録 万葉集や源氏物語など古代日本文学の特徴として女性や農民も詩を広く嗜んだ点…

「茶の世界史」

アヘン戦争もアメリカ独立戦争も茶の貿易摩擦が発端とは有名な話 発酵具合が異なるが同じ葉から作られる紅茶緑茶烏龍茶 ヨーロッパの“東洋文化芸術の茶”への憧れが”西洋市場製品の茶”に変貌する 楽しいティータイムは奴隷貿易や強制栽培が築いた文化でもある…

「鼻/外套/査察官」

ニコライ=ゴーゴリ著 ロシア作家 ロシア文学は残酷なイメージが強い しかしゴーゴリはユーモアのある幽霊や妄想狂などほっこり噺がメイン 鼻を失くして取り戻す噺 お気にの外套を奪われ幽霊になる噺 妄想狂が暴走する噺 全くベクトルの異なるドストエフスキ…

「物語 大英博物館」

「物語 大英博物館」 大英博物館の歴史とコレクションについて解説 ルーブルの様に王家ではなく民間のコレクションから始まった大英博物館 世界最高水準ながら開館250年タダ 南方熊楠・夏目漱石・ガンディー・マルクスなど著名人が足繁く通った 解説・裏話も…

「イワン=イリイチの死/クロイツェルソナタ」

レフ=ニコラエヴィッチ=トルストイ著 ロシア作家ソクラテス・モーツァルトと並ぶ世界3大悪妻を持つトルストイその経験から結婚は長期の売春契約と説く両編とも死と夫婦がテーマ死が迫る感覚と死を迫らせる感覚を克明に描き日記並みに描写が細かい21世紀の…